おかぁさん

1

 スパーンッ


 「ぉおっ」


 「サイズどうら?」

 「いや、ま、まま、まってください! おかぁさん!」


 突然、襖、あけないでくださいいまオレふる、ふる…、


 *


 「ここ、」

 て、レジの奥、


 いやいや、家じゃん。


 襖を開けた普通の和室で、

 「これ、ね、」

 て、渡されたすっごくきつい全身タイツみたいな…ウェットスーツを着るのに必死になっていた。


 波乗りするのはタカシくんで、タカシくんはオレだ、と、ユリさんに改めて? 聴いたおばちゃんは、

 「よかったよぉ、用意しといたんだからぁ」

 て、またやっぱりすごくうれしそうに店の奥からオレ用だとゆうウェットスーツを引っ張りだしてきた。


 トルソー部分をラバーで覆ったブルーのやつ。腕と腿の外側に、波が山を喰うようなロゴが入っている。


 「セミオーダーだけど、まぁ〜、若い子なら大丈夫でしょう」

 「セ…? オーダー、すか? これ、」

 「香織ちゃんからサイズがきたじゃんね」


 梅ちゃん(香織ちゃん)、なに個人情報流してんの⁉︎


 「十万、」

 「え?」

 「ボードとあわせて二十万」

 「に…っ」

 「香織ちゃんが、ボーナスとんだって、笑ったんだら、ほら! はやく着といで!」


 オレも、たぶん、みんなに愛されていた。

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