3

 野良犬に雪をとられて飽きたのか、パパがポンチョを脱ぎだした。


 『ほんきだした』


 みたいな貫禄だ。


 いくぞ、


 唐突に目で合図してくる。

 オレはボードにワックスを塗る手を止めた。


 「…っ、うす」


 ヤベェなんだかいままでにない緊張感だわ。


 「準備運動だ」

 「は?」

 「準備運動だ」

 「は?」


 待っていま、いくぞ、みたいな目をしてましたよね。


 「あ、は、はい、」

 見ればほかのおじさんたちも浜辺でめちゃくちゃストレッチしてる。だけど、


 「おさき」

 「じゃ、ぼくたちいってるね!」

 若い? 三人はまっしぐらに海へ走ってゆく。あ、そういえばあいつらポンチョだってきてなかったじゃん。


 「おなじだと、思うな初心者」

 「あだっ、」

 パパに頭をひっぱたかれる。


 「野球やらサッカーやらとは違うんだ。波乗りは気を抜いたら」

 「はぁ、」


 「死ぬからな」

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