4
*
恐る恐る引いた戸の向こうは、
「わ、」
戸の向こうは、風呂…てか、展望露天風呂だった。
夕陽を弾く海が、眼下に広がる。
パパを迎えにいった海だ。
ぽつり、ひとり、いまはひとりだけ、サーファーが海に浮いている。
山の向こうに身を隠した夕陽の残像が、山の輪郭を紅く燃やす。
冬の宵の、キリリとした空気が頬を包む。
そんな景色に張りだしたウッドデッキに当然のように大きな樽風呂がおかれいて、やっぱり当然みたいに、ひとり、長身の男が湯船に浸かり海を見ていた。
「ぱぱぁ!」
「あ、雪!」
あたりまえだけど空気をまったくよまない雪がまっしぐら、湯船に突進する。
「風呂んなか走るな、あぶない!」
「ぱぱぁあ!」
ギョッとしたみたいにパパがふりむくけど、
「………、」
下に目線をやると、ホッ、としたように肩を落とした。
「あい!」
パパに抱き上げてもらって湯船に浸かる。
「ぶぶぶぅ〜」
タオルでおならとかつくったりしてめちゃくちゃご機嫌だ。
湯船にタオル入れたらまずいだろがっ、て、思うんだけど、
あ、
パパの目、すっげぇ慈愛に満ちてる…あれだ、群れのチビどもを見守る野犬のやつだ。口だしたら噛み殺されそうだ。
なにもいわないことにした。
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