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ワゴンはやがて国道を外れて果樹園のあいま、急峻な坂道をブゥブゥいいながらのぼりだす。
いよいよ怪しい。
なんかこいつを殴れるもの…雪の手にあるプラレールに目がいく。
それに手を伸ばしたところで、
ガッコン
「うぉ!」
「あぁ〜♪」
ワゴンが前触れなくとまった。
急停車すぎて思いきり後頭部をシートにぶつける。
「雪っ! ゆきっ、」
て、雪に手を伸ばすけど
「きゃぁぁぁあ!」
雪はちゃっかり男の腕のなかに収まっていた。
「ちょ…、てめ、」
マウントを取られるまえにプラレールを掴んで、が、
バンッ
唐突に助手席があいた。
「ぎゃっ!」
席からぶざまに転がり落ちてまた雪が笑いだす。なんだよこのギャグみたいな、
「おかえり!」
え?
「ユキちゃん! 天くん!」
えぇ?
そこには、笑顔が眩しいポニーテールのお姉さん。これがきっと太陽みたいな笑顔ってやつだ。
リカちゃん人形みたいなぱっちりお目々をキラキラさせて、頬は興奮するでうっすら紅潮している。ゆったりしたラインのワンピースが揺れる。ユリの香りが鼻をくすぐる。
「おかえり! ようこそ、」
その向こうには真っ白に塗りなおされた小さな古民家。庭に木漏れ日を落とすフェニクス。サーフボードを模した虹色の看板には、
「ゲストハウス ビーチグラスへ!」
『Guesthouse Beachglass』
明るいブルーでそうレタリングされていた。
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