2

 *


 「ゆっきやこんこん」

 「あられやこんこん」


 雪はきらいじゃない


 ただただ横浜では珍しいってだけでテンションが高くなる、オレの精神はガキ並みだ。否定はしない。


 「ふってもふっても、」


 なかなかつもらない。

 いまだってふってもふっても、かわいたアスファルトに消えてゆく。


 「つもんねぇかなぁ」


 つもればホワイトクリスマスってやつじゃねぇの?


 ぱちぱちおぼつかない街灯に浮かぶ薄汚いこの街も、雪に覆われちまえばいくらかましだろ。


 ボロアパートの階段を上がる。

 がしがし部屋の鍵をまわしてベニヤ板のドアを引く。


 「さっみいぃ」


 手探りで部屋の灯りをつけて、


 「うおぉぉお!」


 文字通り飛びあがっちまった。


 ヤバいなオレダサい。

 だけどさぁ、いやいや、


 薄暗い部屋の奥に目を凝らす。


 だれもいないはずの部屋に、


 「なんだ、ネコか? え? どっから入った?」


 うずくまるちっこい生き物。


 「あ?」


 落ち着いてみると、膝を抱えて震えているそれはどうやら、


 「なんだ、ガキかよ…」


 ふつうにニンゲンの子どもだった。


 部屋に知らないガキがいることには慣れていた。

 親父がコロコロ変える女の子どもを、おいていくからだ。

 やつらはいつの間にかきて、またいつの間にか居なくなっていて、オレもたいして気にしていなかった。


 「んだよ、びっくりすんじゃねぇかよっ、電気ぐらいつけとけよ」


 ビビったじぶんにイラついてカバンを放りだすけど、ガキは顔を上げすらしない。


 「んだよ、死んでんの? てか、ストーブ! 寒いだろが!」


 こんな寒い部屋にガキ放置してバカだろオヤジ、いや、バカだったわ。


 ストーブをつけてヤカンをかけて風呂を入れる。


 雪の日にパーカー一枚とかありえない格好のガキにとりあえずオレの布団をかけてやろうとして、

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