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ガン ガコンッ
現れたのはパトカーなんかじゃなくて…古いワゴンだった。
オレの前にまわり込むと歩道にのり上げて行手を塞ぐ。
なんだこの車…まさか、チビのっ
血の気が引いて次の瞬間、全身に逆流する。
ワゴンの助手席があいて、
威嚇くらいならいいか?
雪がきてから使わないようにしていた尻ポケットへ手を伸ばして構える。が、
「ぶーぶーぶー♪」
「ゆっ、」
自動車に興奮した雪が助手席に這いあがろうとしたのをあわてて引きずり下ろそうとして腕を引っ張り込まれる。
ヤバい逃げねぇとっ
ドアがしまり逃げるまもなくワゴンが急発進する。思いきり背もたれに後頭部を打つ。
「テメっ…」
体勢を立てなおしぎわに尻ポケットからナイフを引き抜く。けど、相手の目を狙ったそれはあっけなく、
「っ、」
分厚い手のひらに受けられてしまった。
こいつ、素手で受けやがったっ
とめられるなんて…しかも素手でなんてはじめてだ。小二からケンカ慣れしてきたオレのナイフをかわせるやつなんかそういない。
ナイフを握る手のひらから血が伝うのに我に返る。
「あんた、」
男を見上げて息を呑む。
なにごともなかったかのようにハンドルを握るガタイのいい若い男は、
ヤバいひと、だ…
無造作に刈った頭と陽に焼けた太い腕。それから、野犬の眼。
あきらかにワルイシゴトのオトナだった。
シモダ最悪なんだけど、梅ちゃん…
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