3

 こいつ、お巡りだわ。


 「ありゃ!」

 ピンクの浮き輪を抱えたチビ…雪を抱えて店をとびだす。


 「おにいちゃん! どうしたじゃんね!」

 おばちゃんの声が追いかけくるけどそれどころじゃない。


 「おいっ! 坊主っ!」

 オヤジの鋭い声も、矢みたいに追いかけてくる。


 しゃがれた声にしわしわ日焼けした顔、間延びした駿河弁。小柄な坊主頭、浮かれたアロハシャツに傍に釣竿。


 と、スリとおなじ、隙のない鋭い眼。


 警察だ。


 「にいちゃん! にもつにもつーっ!」


 ヤバいっ

 捕まれば雪を連れてかれちまうっ


 ターミナルをでて国道を走る。

 どこに逃げたらいい?

 まったく土地勘はない。

 むしろ駅に戻るか?

 そうだ、梅ちゃんに連絡…っ


 「うきゃぁぁぁぁぁぁあ♪」

 全力疾走のオレに雪は上機嫌だ。

 「ゆき…意外に重てぇな…デブったか…」


 背後から軋んだブレーキ音。


 来たか?

 パトカーじゃないのか?


 旋風が耳を掠める。車体が肩をかする。


 「えっ」

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