応援コメント

孵化」への応援コメント

  • あぁ、血の悲しきことかな…

  • 存在しない会話の中に……
    終幕の文章から、この少年が抱えていたものは“祖母の「あんたは強姦の末生まれた忌み子や」”に含まれる「社会的拒絶・断絶性」だと仮定する。
    少年は嫌いでもない母親を刺す、好意的な教師を刺すという、この奇異な行動を通して、自分を肯定することさえ否定するかのように思える。
    「忌み子」である自身の存在を無条件に自己肯定されることに対して猛烈な拒絶反応を起こしているのではないかと考えれば、この行動には短絡的ではあるものの、「存在しない会話」を通して、自己否定されたことに対しての憤り、裏切りに対する復讐が育っていったと推理することを否定できないのではないか。
    重要な点はこの自己否定的な不安を、無条件に肯定してくれる相手である母親や担任教師に加害性を向けたことにある。
    二度目の行動で、自己、好意的他者、社会的他者の全方面への報復的でもあることだと説明づけられる。
    しかし、年少者として、先生への信頼と自己存在な空虚さを恋愛のように錯覚していく彼は、恋慕の揺らぎの中で、思考だけが先走っていく。
    対話として不完全な推理は、教師と生徒という関係に望みを持ち空回っていた自分の滑稽さを衝動に繋げてしまう。
    対話の不在から起きた結果だと読み取る方が、社会側は彼にチャンスを与えられる余地を残せるのではないかと思う。
    あちらこちらで自己責任論と無責任な風が吹く中、問題が社会や土壌にもあるのではないかと誰が批判するというのだろう。
    先生が女性であるか男性であるかが、中盤の時点では定かでなかった(描写と台詞からは中性的な男性だとも読み取れた)ので、担任が男性であればもう少し含意のある物語にも仕上がるなと思った。