第6話 クリーニング屋の仕事 秋。
クリーニング屋になって2回目の衣替えシーズンを迎えた。
残業しまくった日から心に留めていることがある。
・翌日仕上げ分だけは絶対に終わらせて帰る。
その年の冬はこたつ布団やカーテンをたくさん預かった。
「布団とかカーテンとか衣類以外のものが店に戻ったら大型品管理のノートに戻った日、預かった物、お客さんのお名前、電話番号まとめといてね。」
酒井さんからノートを受け取り、さっき店に戻った布団や毛布の情報を書く。
「はい。」
「受け取りがあったら線引いて消す。今日は1番と5番の方がお受け取りにいらしてたね。」
「はい。」
私はフリーハンドでがーっと線を引こうとした。
「ちょっと待って!荒井ちゃん、線引くときは定規使ってね!曲がってたら気持ち悪いでしょ。」
「あ、すみません!!」
慌てて竹尺を当てる。
・・・他の人が引いたとこ、曲がってないか・・・?
対応者が店長、本田さんのところは曲がってるぞ・・・。
「ね!曲がってると変な感じするでしょ?」
私が怪訝な顔で見つめていると酒井さんが「やっぱりね!」と言いたげに声を掛けた。
「そうですね、次気を付けます・・・。」
実はその逆だが、女性社会で生きていくため話を合わせる。
会社としても夏の残業事件を受けて衣替えの時期は店員がワンオペで働く時間を減らすようにしてくれた。
衣替え以外の時期は交代時の伝達のみ直前か直後に勤務する人としていたが、最近は6時間働くうちの2時間は2人で対応していた。
仕事の進みが格段に良くなったが、一緒に働く時間が増えた分なのか店員同士のちょっとしたいざこざが増えて少し大変だった。
さっきみたいに細かい線の引き方で酒井さんがイライラしたり、掃除の方法で店長がイライラしたり、ホチキスの針が補充されていなくて本田さんがイライラしたり・・・。
10年後の私が思うに忙しくて皆余裕がなかったのである。
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