第3話 女子大生、スマホ買う。

 今週はどのCD借りようかな〜。

 夏になると「日曜日はレンタルCDのお店に通う」と言う週1のお楽しみができた。


 借りていたのは好きなシンガーソングライターのアルバムが多かった。

たまに友達がカラオケで歌っていた曲を探して借りたり、中学高校時代に聴いた懐メロを借りていた。


 ブーブーブー・・・

携帯のバイブ音が鳴る。画面に充電がないと表示されている。

・・・あれ、家で充電したんだけどな・・・

最近高1から使っている携帯の調子が悪い。


 1か月くらい経っただろうか。


「お疲れ様です。」


「お疲れ様。さっき携帯のお店の人来たよ。」


今日の午前中は酒井さんだった。


「チラシのお願いですか?」


この商店街ではお店同士でチラシを置きあっている。

私のバイト先も「クリーニング200円割引券」を置かせてもらっている。


「それもあるけど私が本田さんが携帯持ってなくて、荒井ちゃんはガラケーだって言ったら2人にあげてってこれくれた。」


当時私の地元では携帯やスマホを持っていない大人が多くいた。

私の祖母も携帯を持っていたがあまり使っていなかった。

酒井さんがくれたのは「スマホの割引券」だった。


「ありがとうございます。」


割引が効いて分割払いにできるんだ。

父に聞いてみよう。


バイト上がり、早速父に頼んだ。

晩酌して機嫌のいい時を狙った。私は何が何でもスマホが欲しくなっていた。


「この携帯、もう充電できないから機種変したいなー。」


父におねだりするのは久しぶりである。

なぜならあまり娯楽のお金をくれないから。そのためにバイトしているところもある。


「割引かかるならいいんじゃない、委任状書くから行って来たら。」


対父だと「割引」は魔法のワードだと学んだ。

時々使っていこうと思う。


「やったー、お父さんありがとー!!」




 次のバイトは午前中で上がれるのでその足で携帯のお店に行った。

爽やかイケメン系のお兄さんが対応してくれた。


「お客様、ご家族のポイントと割引使えば機種代かかりませんけど、どうされます?」


「え・・・、すごいですね。家に確認してもいいですか?」


家に電話すると祖父が出た。


「他に使い道もないしポイントで買ってよ。」


「はーい。」


「じゃあな〜。」


「おじいちゃん、ありがとー。」


無事に白いスマホをゲットして家路を急いだ。


 これも10年くらい前の話だが、携帯やスマホを長期間使って貯めたポイントは「機種変更」、「修理」、「充電器など付属品の購入」をする時しか使えなかった。

27歳の私はスマホのポイントで通販の決済をしながら思い出した。

 

 新しいスマホにも音楽をたくさん入れてすぐにデータ容量がなくなり、泣く泣くパソコン経由でプレイヤーやUSBに入れ直したのも今となっては楽しい思い出である。




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