#2 生徒会長と新生活と -A New Day-
AM6:30──
ピピピピッ…ピピピピッ
無機質に鳴り響くアラーム音。
カーテンの隙間から嫌という程明るく差し込む陽光。
「んぅ…うるさ…」
ベチィッ!!!!!と思い切り力を込めてアラームを止める氷華。
「…あと5分…zz」
と、二度寝に入ろうとするが…
瞬間、思い切りドアが開く。
「マルロクサンマル!総員起こォし!!!」
パッパラッパパッパパッパパパパパー!!!!!
そうはさせまいと唐突に鳴り響くラッパの音。
「ピャァァァァァァァッ!?!!?」
流石の氷華もびっくりして飛び起きる。
「二度寝なんてさせてたまるかっての。ほら起きろ、学校行くぞ。」
「レディに対する礼儀ってモノを戦場に落としてきたのかしら!?このだぼ!!ノックくらいしたらどうなの!?」
無理もない。
ノーモーションでドアを開けたが故に確認してなかったのだろうが、掛け布団で隠してはいるものの、今の氷華はブラウス1枚に下は肌着と言う、いわゆる彼シャツ状態。
言われて気がついたのか、流石の六駆も顔を背ける。
「…悪かった、後でコーヒーでも奢るから早く着替えて下に降りてこい。」
「ふざけんな!!!この変態!!!死ねッ!!!」
「ふぉぶっ!!!」
氷華の投げた枕が顔面にクリティカルヒット。
反動で部屋の外に追い出される。
ダァン!!!
同時に部屋のドアが閉まる。
「最ッッ低…!!!」
顔を真っ赤にして悪態をつきながら布団から出て、制服に着替える。
「毎朝こんなんだったら最悪だわ…部屋のドアにノックしなきゃ殺すって書いとこうかしら。」
などといいつつ準備を急ぐ。
数ヶ月ぶりの学校、新しくもさほど代わり映えのない日々が、また始まる…
AM7:00 通学バス内──
「まだ怒ってんのかさっきの事。」
「当たり前でしょ、レディの寝起きだけじゃなく下着まで見て。あの程度で済んだだけマシだと思いなさいな。」
「悪かったよ、まさかあんな格好で寝てるとは思わなかったんだって。」
あからさまに機嫌が悪そうな氷華に対し、バツが悪そうに謝る六駆。
「スタバ。」
「は?」
「今朝コーヒー奢るって言ったでしょ、スタバで許してあげるわ。」
氷華は無類のコーヒー好きだが、スタバの新作には特に目がない。
「グッ…缶コーh…」
「私の下着まで見て、缶コーヒーで済まそうなんて考えが甘いんじゃなくって?新作、奢ってもらおうかしら。」
六駆の提案を遮るが如く、食い気味に圧をかける。
「分かりましたお嬢様…」
これには逆らえない…確信した六駆は渋々と条件を受け入れる。
【次は〜白百合台、白百合台に停車します】
「ほら、さっさと降りるわよ。」
バスのアナウンスを聞き、荷物を抱えて降りる準備をする。
ギター、エフェクターボード、鞄…
少なくともボードに関して言えば高校生レベルが持ち歩くサイズの物では無い。まるで棺桶だ。
キャリーカートの紐をキツく締め、持ち上げる。
瞬間、バスが停車する。
「降ります、道開けて下さい。」
声を聞くと乗客はサッと両端に寄り、道を作る。
異様な光景に六駆は一瞬目を丸くした。
「一体何をどうしたらこうなるんだ…」
不思議な顔をしつつも、氷華の後を追ってバスを降りた。
AM7:35 正門前──
私立涼蘭(りょうらん)高校。
地域では学力・進学率こそ高いが、一部生徒の素行が悪い事から「見た目は綺麗な不良校」と言われている。
「そこの生徒、スカーフが曲がっていますわよ!」
「そこ!はしたない、きちんと制服を着なさい!誰が腰までズボンを下げて登校していいなんて言いまして!?」
生徒会だろう生徒が服装チェックをしている。
黒髪縦ロール、腕には生徒会の腕章。
いかにもな女生徒だ。スタイルもいい。
「おはよう、会長」
「あら?どの面下げて来たのか知りませんが、登校してきた事は褒めてあげますわ水瀬さん。」
「るっさいね、アンタが来いって言ったから来てやったんでしょうに。」
「学生たるもの、学校に来て勉学に励むのが学生と言うものです。後で生徒会室に来なさい、3ヶ月分みっっっちりお説教して差し上げますわ!!」
「はぁいはい、気が向いたらね。じゃ。」
氷華はそのまま校舎へ向かってしまった。
学校でもあの調子か…と、しかめ面をする六駆。
「あら、貴方は…」
「よぉ。転校初日から見せ付けてくれるね。」
「お恥ずかしい所を…ごめんなさいね、見ての通り本当に手を焼いてますのよ。貴方が来てくれた事で、少しは水瀬さんの抑止力になればいいのだけれど。」
ほとほと呆れた顔で愛想笑いをする女生徒。
伊墨葵、16歳。
私立涼蘭高校の生徒会長。
品行方正、文部両道。
まさに生徒会長と言う物を体現しているカリスマ的女生徒。
趣味はヴァイオリン。幼少期から続けているらしく、コンクールでも何度も優勝している。
彼女もまた、氷華と共に時の人となるのである…
「ともあれ、転校初日ですわね。まずは職員室に行って頂けますこと?中央棟の2階にありますわ。正面玄関からすぐの階段を上がって右手にありましてよ。」
「ご丁寧にどうも。そうさせてもらうよ。」
挨拶をして向かおうとした所で再度後ろから呼び止められる。
「あ、お待ちになられて?」
「まだ何か?」
「水瀬さん以外に3人、不良仲間がいますの。その子達にも目を向けてくれるとありがたいのだけれど…」
「頼まれ事が多いな…善処するよ。」
そう言って六駆はその場を後にした。
キーンコーンカーンコーン…
新たな生活を告げる始業のベルが、正門に鳴り響いた──
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