第2話

 女は、わたしを男だと思って逃げる様子だったので。


「女だよ」


 と言ってみた。男の声で言っても意味ないか。


「そうなの?」


 疑問符。


「うん」


「じゃあ、いいかな。撮っていいよ?」


 いいのか。男女判定緩いな。


「隣いい?」


「どうぞ」


 女が、隣にのっさのっさと歩いてくる。意外と小さい。大きく見えたのは、雪を踏むのが上手いからか。


「よいしょぉ」


 隣に座った。いや隣に座ったら撮れなくない?

 しかもなんか近いし。カメラ向けるのも無理な接近具合。くっついてるし。

 無言。

 あ。

 黙るのか。

 じゃあいいや。

 カメラを取り出して、風景の撮影にもういちど没頭する。隣は、なんか暖かい。

 ズーム機能。

 わるくない。ただ、少し白がちらつく。できれば完璧な白として撮したかった。まだ先がある。それだけでも、収穫としては大きい。

 撮った写真を一度確認。

 ううん。

 白のちらつきが、どこか良い雰囲気になっている写真もある。

 迷うな。

 白のちらつき自体も、モードとして足しておいたほうがいいかもしれない。ちらつき自体を抑えるために全体をぼかすのも、本末転倒な感じもするし。どういうシステムを組もうかな。


「ねぇ」


「あっはい」


 忘れていたわけではない。なんか、隣がずっと暖かいから。この子、暖かいな。


「なにを、してるの?」


 あっ。わたしのことか。


「写真撮影」


 持っている通信端末を、放り投げる。


「あっわっ」


 彼女。あたふた。


「大丈夫だよ。超防湿低温耐性だから」


「ぼうしつ、てい、え?」


「まぁ、簡単にいうと。宇宙まで持っていけるぐらいつよい」


「そうなんだ」


 彼女。わたしの通信端末を雪に突っ込んでる。


「ほんとだ。こわれてない」


「ね」


「写真?」


「うん」


 彼女。気づいたような感じから。わたわた。


「もしかしておしごとの邪魔を」


「してないよ」


 してない。邪魔はしてない。


「ごめんなさい」


 しまった。暗い顔したかな。


「いやいや。ほんとに。趣味だから」

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