第1話

 雪女だと、思った。

 なにもない雪原。真っ白に、なだらかな丘陵。

 その端から、急に、歩いてくる。しかも、なんか、にやにやしながら。思わずカメラのズームを下げる。なんかこわい。


「あ。ひとがいる」


 こっちの台詞。


「おおい」


 手を振って。消えた。


「おわ」


 あっ出てきた。転んだのか。


「あはは」


 たのしそう。

 つい、カメラに手が行く。

 ボタン。ぽちぽち。


「よいしょ。よいしょ」


 女が、歩いてくる。転ぶのも気にせず。あっまた転んだ。今度は復帰がはやい。


「あ。おとこのひと」


 え。そこ?


「ごめんなさい。おとこのひとだとはおもわなくて」


 そんなにフリーセックスな冬装備だっただろうか。

 いや。

 白装備に、遭難対策のライムグリーン畜光材。そしてこれもお気に入りの、黒のライン。そんなに女感あるわけでもなさそうだけど。


「わたしのこと、撮ってた?」


「いや」


 そういうのは許可をとらないと、撮らない主義。


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