元少年達の償い ③
14年前。
パトカーのサイレンが雨の降る夜に鳴り響く、規制線のの向こう側には夜にも関わらず野次馬で埋め尽くされている。
警察官の声が聞こえ、アパートの部屋の窓の向こうから見ていた1人の少女は呆然としていた。
すると、兄と思われる青年は少女の肩を掴んでこう言う。
「なんで……こんな事を……」
少女は青年に抱きつく。
少女は怖かった。
騒々しい雰囲気の中で、胸が圧迫されていく。
それだけでは無い。
少女は台所の方を見ると、そこには、大量の酒瓶やビール缶ばかりの机に泡を吹いて亡くなっている、母親の姿があるのだから。
少女はただ、あの人の言う事を聞いただけなのに。
なのになぜ、こんな事になったのか。
それを知るのはまだ先の話である。
そして少女は警察に連行された。
怖かった。
それだしか考えられなかった。
見知らぬ大人が怒号し、少女を追い詰める。
特にあの言葉が、怖かった。
「お前が殺したんだぞ」
南碧は飛び上がるように起きた。
彼女はいつも5時半に起床するのだが、この日は5時に起きてしまった。
身体中から寝汗がびっしりと出ていて、寝間着が湿っているのを体全体で感じる。
碧はどんな夢を見たのかはあまり覚えて居なかったが、とても怖かったのは覚えている。その為、1度お湯を飲んで、落ち着くことにした。
しかし、何故か飲みたくなかった。
目の前に自分で沸かしたはずのお湯、何も入っていないはずなのに、なにか怖さを感じてしまう。
これのせいで、自分は一生後悔してしまうんじゃないかと無意識に思ってしまう。それでも、彼女はお湯を飲んだ。
お湯を飲んで、一息ついた後、碧は外に出て、外の空気を吸う事にした。
外の空気は綺麗で肺の中の空気と入れ替わり、身体中を巡っていく。どことなく身体が綺麗になっていく様で、碧は気持ちよく感じる。
その後、朝食を済ませて、スーツ姿に着替え、日向塾に向かおうとしたが、彼女はある事に気づく。
「まだ7時だ……」
朝9時過ぎ。
日向塾の自習室には、英語のワークに苦戦する東間が居た。
それ以外に人は居らず、やはり事件のせいで辞める人もそれなりに出てしまったらしい。
「えーこれが……」
「これ②」
「ああ、なるほどありgぇぇぇ?! 碧ぃ?! なんでここにいんだよ」
「事件の捜査に決まってんでしょ」
「ああ、なるほどね。それなら俺も呼べよ〜」
「何言ってんのよ、学生なら勉強優先しなさいよ」
「ガッコウイッテナイヨ?」
「……勉強しろ」
「あーい」
その後、碧は別の教室に行くと、そこには黒髪の30代前半の女性の教師が座っていた。
黒髪のポニーテールで、黒縁の四角いメガネをつけている。
碧が向かい側の席に座る。
「あなたが、
「はい」
笹辺は細々とした声で返事をする。
「早速ですが、事件当時は何をしていましたか?」
「その時は家で料理を作ってました」
「資料によれば笹辺さんは独身でしたよね。という事はアリバイは無いと」
「はい……でも、私はやってません。確かにあの子達は犯罪をしましたが、今はもう更生して、ちゃんと真面目に授業受けてます」
「確か……残る2人は
「特に、変わった様子はありませんでした」
「……そうですか。ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」
碧が席を立ち、礼をしてから部屋を出ようとすると。
「あの……」
笹辺は細々とした声で彼女を呼び止めた。
「どうかしましたか?」
「……照井君の様子はどうでしたか?」
「…………」
碧は一瞬言うべきか迷ったが、ちゃんと伝えるべきだと判断する。
「病院で調べて見た所、脳の血管がズタズタに切られていて、脳死と判断されました」
「……そうですか……」
彼女の声はより弱く感じた。
碧はそのまま教室を出る。
しかし、碧は少し言い方が悪かったかもしれないと少しだけ、罪悪感を感じた。
その日の夜。
碧は自宅で資料をまとめようとカバンを開けると、ある物が無いことに気づく。
「……スマホ無い」
碧は今日の記憶を辿る。
朝起きて、笹辺さんの調査、そこからまたイヤミな弁護士にあの日の事件の関連者を聞き、そこからサンライズでコーヒーをミルクと砂糖たっぷりで飲み。
ようやく気づいた。
日向塾に置いていた事だ。
笹辺さんに事情を聞いていたあの時にスマホを机の上に置きっぱなしにしていたのだ。
このままだと上司が連絡してきても分からない。
大変なのですぐに碧は取りに行く事にした。
自転車を漕いで、日向塾に着くと、もう既に電気は暗くなっていた。
「……とりあえず管理人さんに言えば開けてくれるわよね」
碧は管理人室に向かい、鍵を貸してもらった。
扉を開けると、中は暗く、昼間とは違って人気の無い印象が怖さを強調する。
管理人に貸してもらったライトを付けて、碧は教室へ向かう。
そして、机にそのままにされていたスマホを発見した。
「良かった……あった」
碧は早速スマホの中の通知を確認する。
その刹那、後ろから何かが振り下ろされるのを察知し、碧は避ける。
突然の事だった為、碧は机に体を打ち付ける。
「いっ……誰!」
目の前には、手持ちの鎌と、剪定鋏を持った。黒い怪人の姿があった。
「影……」
碧はすぐに変身しようとするが、怪人の2度目の鎌の攻撃が来る。
碧はそれを避け、すぐに逃げるべきと判断し、教室の扉へ向かう。
しかし、教室の扉の鍵は施錠されていた。
あの怪人が鍵を閉めたのだろう。
「まずい……」
碧は誰でも良いと思って、電話をかけ、誰かに電話が繋がる。
しかし。
ガンッ!
「助け……て」
碧の意識は、ここで消えてしまった。
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