影山武者殺人事件 ⑤
北崎の口から話された衝撃の真実。
東間と碧は息を飲み込む。
「……あ、あくまで推測だろ? そんな映画じゃあるめぇし」
北崎はお茶を1杯のみ終えた後に。
「そうだね、あくまで推測でしかない。ただの偶然だってある。という事で、話は以上だ。君たちはこの事件を頼んだよ。僕はこの後、その件についてもう少し調べるから」
「はい……わかりました」
碧が少し動揺しながら返すと、碧はある事を思い出した。
「あっ! 北崎さん。実は……少し言いたい事が」
「なに?」
「犯人を追っていたら山に入ってしまって、その時、ちょっと変わった匂いがしたんです」
「……それって」
「はい、あれは、大麻の匂いでした」
「……なるほど。山奥で大麻を栽培してた……確かに、こんな辺境の村なら警察も少ないだろうし、バレる心配も少ない……」
「おいおい、どんどん話がヤバくなってねぇか?」
「でも東間、私が嗅いだ匂いは確かに大麻だったわ」
「お前もしかして大麻s」
「する訳無いでしょうが!」
「グッはァ!!」
東間のみぞおちに碧のスライディングチョップが決まった所で北崎はクスクスと笑う。
「ちょっ……てめぇ……おぇ」
東間はみぞおちがかなり効いたらしく、やや声が何かを吐きそうな感じだった。
「まぁ2人が仲良くしてて良かったよ。それじゃあ、僕は大麻について調べるから、事件は君達に任せるね」
「わかりました」
「あっあと、碧ちゃん」
「……何ですか?」
「あまり無理はしないでね」
「……はい」
北崎が部屋から去ると、朱音が北崎の荷物を持って来る。
そして北崎が影山家の屋敷から去り、東間は影山正宗の殺された現場へやってきた。
現場は正宗の自室らしく、盆栽やそれなりの価値がありそうな掛け軸。更には骨董品の壺まである。
だがどれも影山正宗の血が飛び散り、名品というより曰く付きの品になってしまっている為、もう鑑定番組やネットオークションに売り出しても怖くて額が付かないだろう。
東間は影山正宗の死体を見る。
右肩から袈裟斬りにされたその遺体は恐怖に歪んだ表情をしており、中々に怖い。
もう死体慣れをしている東間はまだましだが、西宮舞のような一般人が見たら吐く事間違いなしだろうと東間は思いながら、死体を端から端まで見る。
「やっぱり変な所は無いか……碧ー、なんかわかったかー?……ってあいつは山道の捜索だったな」
東間が部屋を出るとちょっぴり尿意が来たので、トイレに向かおうとした。
この屋敷のトイレはちゃんと水洗式で1度洗面台を挟んである(お風呂にも洗面台はある)というかなり珍しい間取りをしている。
トイレの引き戸を開けるとそこには狐の面を被った使用人、宮下朱音が立っていた。
「ぬおわぁ!?……って使用人か」
「ええ、すみません。少し掃除を……」
東間にとっては狐の面越しでも彼女が焦っているのがわかる。
「ああ、そうか。便所借りるぞ」
こうして東間は用を足し終え、個室を出て、洗面台で手を拭き、廊下に出る。
するとまた、朱音に出会った。
東間は彼女の肩を叩いた。
「……何ですか?」
「いやさ、ちょっと気になってたんだけどさ。なんで狐のお面なんてつけてるの?」
「これは、昔火事で顔を火傷してしまって……それで周りに不快な思いをさせたくなくて、お面をつけてます、意外と視野は広いですよ」
「視野あるんだ」
「はい、人並みには」
東間はその返答がよく分からなかったが、とりあえず彼女は大丈夫だと言うことはわかった。
そして、意外にも彼女は気さくに話してくれるのだと言うこともわかった。
東間は最初、やや冷たい仕事人間だと認識していたが、彼女もまた優しい人間なのだろうとこの時実感したのだ。
「では、この辺で大丈夫ですかね? 私そろそろ夕飯の支度をするので」
「わかりました」
朱音はそそくさと調理場に向かった。
しばらくして、碧が山から帰って来て、状況を伝えた。
山にはとくに怪しい草や葉っぱは見つからなかったらしい。
碧が追いかけたあの時は道も暗く、正確な位置が分からない為、山内をくまなく捜索したものの、大麻のような物はどこにも無かったのだ。
「やっぱり気のせいかなー」
「だろうなーもしあったとしてもとっくにバレてんだろ」
「そうよねー」
「夕飯、確か鮭の塩焼きだっけ?」
「あ〜そうね。あれ皮パリパリしてて美味しいわよね」
「俺は皮食わねぇけどなぁー」
「もったいないじゃない。私食べるから」
「……暴食の女」
「足がいい? それとも拳?」
「モウシワケゴザイマセンデキタユルチテクダサイ」
「そんなことより、影山家の人間がなぜ狙われるのか、推理しないとじゃない?」
「外部の犯行って線もあるけど、あの甲冑を着て街中出歩いたら目立つし、何より重たいしな。影の力で重さはなんとかなるが、やっぱり見た目が目立つ。だから夜のうちに殺してんだろうけど」
「家の中で動機がある人とかは?」
「一応、修斗は家督を継げないから恨み目的で殺す……って手はあるけど、弱いな」
「あっあの狐は」
「朱音か? あいつは……真面目な使用人だったぞ。意外と話しやすかった」
2人は謎につまり、知恵熱を出す程悩んだ。
夕飯を食べている時も鮭の塩焼きの味よりも、影山家の関係者の動向をそれぞれ眺めているのがメインだった。
そして何も分からぬまま、2人は眠りについた。
その日の夜。
何者かが、息を荒げ、手に持った物を見る。
四角い瓶の底の角には赤い血がべっとりとついている。
やってしまった。
頭の中はパニックなり、冷静に考えられない。
その時、閉めていた部屋の扉がゆっくりと開く。
ドアが開くと同時に心臓の鼓動か大きくなっていく。
そこに居たのは。
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