怪盗シャドウの殺人劇 ④
怪盗シャドウはマントを広げ、中庭に降り立つと、シルクハット外し、紳士の挨拶をする。
東間は何をやってるんだこいつとツッコミをいれる気すら無かった。
怪人は驚いたのかその場に固まっている。
「あぁっ、あんたが怪盗シャドウ?!」
「ふははははははは」
「何笑ってんだ!?」
「いやぁ、落ち着きたまえ海賊くん、私の偽物は、本物である私が倒そう。そう、この華麗なる怪盗シャドウが」
「逃げたぞ偽物」
東間がそう言うと、怪盗シャドウは急に言葉を無くした。
「えっ、ほんとう?」
「ああ」
「……後日会おう!」
怪盗シャドウは闇夜に飛び上がって逃げていった。
「待てゴラァ!」
東間は追いかけるも、空を飛んだ相手ではさすがに追いつけず、追跡を断念した。
翌日。
怪盗シャドウの予告が明日となる中、東間は2階の部屋に篭っていた。
碧は怪盗シャドウの資料をまとめ、昨夜起きた館長の屋敷の殺人事件の現場写真を眺めていた。
「やっぱり……心臓を抜き取って刺した……のかしら」
「事件の調査? 真面目だね」
「そりゃ、東間があんな目にあってるんですもの」
「仲間思いなんだね」
「……いやなんというかですね? 一応仕事仲間として危害を加えられたから許せないと言うのであって、そう言う私情は無くてですね……」
「かっこいいと思ってるんでしょ? 東間くんの事」
北崎のその発言は彼女の鼓動を急加速させた。
「ななななななななななななななななななななにを言っているんですか?! わわわわわ私は、べべっべっべべつにそんな歳下の子にそんなにみだなら感情は覚えてません」
「落ち着きなよ、ほら、ショートケーキあげるから」
「ああああああああありがとうございます」
「大丈夫? 滑舌ラグくなってるよ?」
差し出されたショートケーキを碧は3口で食べる。
「縺翫°繧上j縺ゅj縺セ縺吶°?」
「大丈夫? 滑舌文字化けしてるよ?」
「だ、大丈夫です」
「にしてもよく食べるねえ」
「ええ、、昔お兄ちゃんがよく料理作ってまして、私が空手部に入ってたのもあるんでしょうけど」
「ヘぇ……」
北崎は切り取ったショートケーキを碧に差し出す。
それを碧は2口で食べた。
「おかわり」
「次は1口かい?」
「……え?」
本人は自分の食の速さに自覚していなかった。
「……とにかく、明日の夜。怪盗シャドウの偽物は必ず現れます。絵を盗むのかどうかは分かりませんが、とにかく明日に備えましょう。東間くんは夜に来てくださいね。影がないと気味悪がれます」
カウンターの奥の階段から東間が降りてくる。東間の足元には影が無かった。
「俺も出たくねぇよ……いかんせん俺も気持ち悪くて……しかも鏡にも映らねえから寝癖直せねぇ」
「影がないと鏡にも映らないのね」
「うん」
「でも髪型は綺麗ね……ぷっ」
「おい今笑ったろ」
「いや、何も……ぷっ」
「ほらぁさっきも」
碧は足早にサンライズを去る。
その後、車の中で東間のピョコっと出た寝癖を思い出して爆笑していた。
翌日、いよいよ怪盗シャドウの予告当日となった。
美術館は相変わらず騒々しく、武を中心に警備員やら警察やらが動き回って、怪盗シャドウの対策をねっている。
「おお、碧君。東間君はどうしたのかね」
「東間君はちょっと遅れてきます」
「そうか、確か彼は高校生だったな……」
「ま、まぁ……」
歳はそうだが、高校には通ってないと碧は思いながら、碧も対策会議に参加する。
「いいか、警備員は美術館の周りを見ておけ、特殊捜査課の2人は絵画の周りを常に回るように警戒してくれ。作戦は以上だ」
「なんか雑じゃないですか!?」
「色んな手を打ったが過去にやられたからもうこれしかない」
「つまり、見つけ次第即確保って事ですか?」
「その通りだ!」
碧は大丈夫なのかと心配になりながらも、絵画の周りを監視する事になった。
昼間は開館しているので特に怪しい人物はいなかった。
すると、どこからか見覚えのある人物が絵画の近くを通りかかる。
諏訪雅之の孫である諏訪信之だ。
「あっ……昨日の刑事さん、こんにちは」
信之は小声で言う。
碧も会釈を返す。
すると、碧は信之のある異変に気づいた。
左手に包帯が巻いてあるのだ。
手の甲の傷を隠しているらしい。
「その傷、どうかしたんですか?」
「ああ、ちょっとキャンバスを作ってたら怪我しちゃいまして……」
「そうですか、気をつけてくださいね」
「はい、その絵、今夜盗まれるんですよね」
「そうですね」
「……なんか複雑な感じです。これから盗まれようと言うのに、人はまるでマジックショーを見るかのようによってくる」
「そう……ですよね。でも任せてください。私が、何がなんでも守ります」
「ありがとうございます」
そういうと信之は絵画の元を去った。
碧が怪しく見ていることに気づかずに。
そして、夜が来た。
碧はやや眠気に襲われつつも、絵画を見守る、
その絵画のタイトルは『親子』だと言うのを碧は思い出した。
その絵は人の顔はあまり分からないが、大きい人が木陰から小さな子を見守る暖かい絵だった。
こんな優しい絵をあの怪盗は盗もうも言うのか、なんて非道な奴なんだと碧は改めて実感した。
すると、絵画に向かってフックが飛んでくる。
碧は取らせまいと、フックを掴み、絵画に引っ掛けられないようにフックを引っ張ると、怪人が引きずられてきた。
引きずられてきた怪人の背中を碧は踏みつける。
「あんたが怪盗シャドウね。やっぱりあんな目立つ格好だと、盗みは難しいから、盗む時はそんな地味な格好でやってる訳ね」
碧は影乃警察に変身し、銃を怪人に向ける。
その時、ガラスの天井が派手に割れる音が静かな美術館に鳴り響く。
「そんなコソ泥が私と言うのかね? 警察君」
「……えっ?!」
空から飛び降りてきたのは、シルクハットに黒いマントの怪盗。
碧が資料で嫌という程見た、怪盗シャドウだ。
「警察君、そいつは
「あんたこそ、泥棒と一緒よ。物を盗む事を遊び半分で」
「遊び半分では無い。警察君では捌けぬ悪を捌くのが、怪盗の役目だ」
「……知らないわよそんな事」
2人が口論をしていると、影乃泥棒は隙をついて、碧の足元から脱出し、絵画に向けてフックを放つ。
「「させるかぁ!」」
怪盗と警察の声が揃い、2人は同時に絵画を持って、上に投げあげる。
「あっちょっ怪盗!」
「君こそなんで投げるかね!? この絵高いぞ!」
「いやそれはあんたが」
また2人が口論をしていると、影乃泥棒はフックを上に伸ばし、絵画をぐるぐる巻きに固定し、絵画を手元に引き寄せる。
「「あっ絵が!」」
2人は影乃泥棒に駆け寄るも、影乃泥棒は左手から針の弾幕を放つ。
怪盗はそれを避けるが、影乃警察はそんな弾幕をものともせずに、そのままガンガン歩み出し、ついに影乃泥棒の目の前に着くと、右手の拳を影乃泥棒に放つ。
影乃泥棒は吹き飛ばされ、影乃警察は絵画を確保する。
「よしこれで」
「それに触るな」
その声は、怪盗ではなく、影乃泥棒だった。
そして影乃警察はその声をよく知っていた。
「信之……くん?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます