怪盗シャドウの殺人劇 ③
「ついにやっちまったな……義賊が、ただの悪人に」
東間はそう言うと、空気は重くなり、騒然とし始めた。
数分後八尾刑事のパトカーが到着し、遺体を確認する。
武達3人は、事情聴取され、その後捜査に加わる事になった。
「八尾さん、なにかわかりましたか」
「ああ、碧ちゃん? いや〜これは妙な死体だよ? 何せ心臓を抉り取られてるのに、遺体に傷跡が全く無いんだよ」
「えっ、あんなに綺麗に取れているのに?」
「ああ、レントゲンも撮って見たんだが、骨どころか、筋肉にも傷がついてない」
「そんな事、出来るわけないですよね……」
「ですよね……」
2人でそう悩んでいると、事件現場にとある女性がやって来た。
その女性は急いで来たらしく、規制線を越えようとして、警官に食い止められていた。
「あなたぁ! どうして!」
「ちょっ、奥さん、すみません! これ以上はさすがに!」
泣き叫ぶ女性はその場で泣き崩れ、その悲鳴は美術館中に鳴り響いた。
「あの女性は?」
「ああ、美術館の館長の奥さんだよ、医者らしいが、あれじゃしばらく仕事は無理っぽいな」
「そうですね……」
八尾は再び、事件現場に戻る。
その後、東間が自動販売機から買ってきたジュースを碧と八尾に渡し、館長の妻の哀れな姿を遠くから眺める。
「怪盗シャドウ……こんな事までする奴とはな」
「あの予告状も武さんが調べてるけど、パッと見は前に資料で見せてもらった予告状と一緒ね」
「まぁな、口調が真面目だけど。あっ後頼みたい事があるんだけどさ」
「何よ?」
「あの館長の奥さんの護衛をしたいんだけど」
「そんな事しても……」
「館長の次は奥さんかもしれないだろ? 今の所、次に狙われそうなのはあの人以外居ない」
「……確かに」
「もしかしたら、怪盗シャドウが来るかもだしな」
「……問い合わせてみるから、私は特殊捜査課に戻って怪盗シャドウを調べてみるわ」
「おっ、よろしく〜」
2人が別れようとしたその時、1人の少女が話しかけてきた。
「あの……何かあったんですか?」
その少女はフリルの着いたドレスのロリータ風のファッションに身を包み、信之とおなじようなキャンパスノートを脇に抱えていた。
身長はかなり小さく、140後半の碧とほとんど変わらない。
「ああ、あまり聞かない方が身のためですよ?」
「そうだよ、この脳筋の言うt」
東間は腹に鋭い一撃をくらい、その場に腹を抑えて倒れ込む。
「このお兄ちゃんの話は無視しといてね〜」
「は、はぁ……あっ。私、隣の展示場で個展を開いてる。
「私は、日向署の刑事の南碧です。実はここで殺人事件が起きまして、なんか不審な人物とか見ませんでしたか?」
「うーん、特に見ては居ないですけど……諏訪雅之さんの呪いだったり……」
「呪い?」
「まぁ、画家の噂程度なんですけど、諏訪雅之さんって、個展とかをやらない人なんですよ。絵を売るのは、その絵を一生大切にする人のみ。欲の皮が突っ張った人間には渡さないんですよ。確か、画商に見せたら5000万円も値が付く絵をその絵を見て感動した近所の婆さんにタダで渡したとか。ですから、あんまりこういうのって不謹慎というか……お孫さんよく許しましたよね……」
「そうですか……」
「まぁ何か情報になればいいんですけど」
「ありがとうございます」
彼女の話を聞いた後、碧はサンライズで資料をまとめ、東間は無理を言って館長の妻の護衛に入ることにした。
しかし、東間が護衛するのは、屋敷の外だけで、妻が居る中には入れなかった。
いくら専門家とはいえ、そんな都市伝説の様な物は信じられないらしく、家には入れたくないとの事。
東間は渋々、豚骨醤油のカップ麺をすすりながら、屋敷の門の前で立ち尽くしていた。
館長の屋敷はとても広く、日向市の外れにあり、まるで一昔前の豪邸の様だ。
しかし、門の前ではそんなのは見えず、門の奥に見えるのは森と森と森。
東間は仕方なく了承したものの、一応連絡先は渡して置く事はできた。
「全く……なんで……門番……なんだよ」
そんな事を麺をすすりながら呟くと、何か黒い塊が、ひとっ飛びで門を超えるのを見た。
その時起きた風て、東間の持っていたカップ麺はスープを地面に飲ませて、地面に落ちる。
「まじか、正面突破かよ」
東間はすぐに影を纏い、影乃海賊に変身し、門を開けて走り出す。
すると、屋敷から妻の悲鳴が響く。
他の護衛の人もすぐさま動いたが、屋敷に入って押さえ込もうもするも、窓から人が吹き飛ばされていくのを影乃海賊は見た。
そして屋敷の中に突入すると、そこは白い大理石の屋敷に広がる倒れた護衛の人達と、ナイフで突き刺された心臓を持った、黒い姿の怪人だった。
黒いフードを被り、左手はフックになっている。
「怪盗……シャドウか?」
その怪人は影乃海賊を見るなり、左手のフックを伸ばし東間に攻撃を仕掛ける。
影乃海賊はカットラスでフックを弾き、間合いを詰めようとするも、怪人は素早く、階段の手すりに寄りかかり、影乃海賊に向けて、針を発射する。
影乃海賊はカットラスで針の弾幕を弾き返すも、数発は影乃海賊にあたり、そこから血が流れる。
「おいてめぇ! 怪盗シャドウなのか!?」
すると、怪人はカードを投げつける。
それは怪盗シャドウの予告状とほとんどおなじ形をしている。
文面にはこう書いてあった。
『殺人劇はこれにて終幕、明日のショーに御期待ください。 怪盗シャドウ』
「ふざけんな! 義賊じゃねぇのかてめぇは!」
怪人はその発言が尺に触ったのか、影乃海賊に向けて、フックを伸ばす。
影乃海賊はカットラスで弾こうとすると、そのフックは影乃海賊の体内に入り込んだ。
しかし、痛みはなく、体が引っ張られる。
そして、怪人がフックのロープを引っ張ると、影乃海賊が引き抜かれ、東間は元の状態に戻ってしまった。
正確に言えば、戻ってしまったのではなく、盗まれたのが正しい。
「……へ?」
東間は改めて影を纏おうとするも、何故か纏えない。
それどころか足元に影がなかったのだ。
「はあああ?!」
怪人は手元に黒いボールを持っていた。
東間はあれが自分の影だと気づき、取り返そうと、階段を登るも、怪人は中庭へ飛び出し、そのまま逃げだそうとする。
東間は階段の手すりから飛び降り、全力で走る。
「影返せェ!」
怪人は振り向いて、東間にフックを投げつけようとしたその時。
カードが、怪人の右手に突き刺さり、怪人は右手を痛めたのかその場でカードを引き抜く。
「誰だ!」
東間がカードが飛んできた方向を見ると、そこに居たのは。シルクハットにマントを羽織った紳士服の怪盗。
「お前は……」
「どうやら、私の偽物が。悪さをしている様だね」
怪盗シャドウ、参上。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます