事件file2 学園連続狙撃事件
学園連続狙撃事件 ①
某日、署長室に1人の人物が訪れる。
「署長、そちらの刑事課で1人、影を使える人物が居たようですね」
「うむ……君の情報網は相変わらず速いな。その速さも、あの男を捕まえる為かね」
「まぁ、それもあるでしょう。彼女をうちで預かっても良いでしょうか?」
「うむ……わかった。良いだろう」
退院してから3日後。
日向署の刑事課に復帰した碧は八尾からとある紙を渡された。
「……異動ですか?」
「ああ、特殊捜査課と刑事課を兼任してくれってよ。だからこれから変な事件になったら、あいつらに連絡頼むわ」
「は、はい……」
碧は困惑しつつも、紙に書いてある部屋へ移動する。
「失礼しま……え?」
扉の向こうに広がった景色は棚、棚、棚、そしてダンボールの山だった。
人気など全くなく、誰かがいるような気がしない。
ホコリが部屋中に飛び、掃除もされていないのが一目でわかる。
「きったな!」
仕事中は私語を慎む碧も流石にこれは驚いた。
ホコリを吸わないように口で覆いながら入ると、パネルが立っていてそこに張り紙が付いていた。
『特殊捜査課はこちらです。日向市嵐山地区198-1』
「……え?」
碧は書かれていた住所に向かうとそこは喫茶店だった。
どことなく趣な建物で扉にかけられた看板には『sunrise』と書かれている。
店内に入ると、昔ながらの喫茶店で、本棚にはマンガや雑誌が並び、カウンター席にはコーヒーメーカーなどの調理道具が並び、一人の男が、カップを洗っていた。
その男はワイシャツとズボンの上にエプロンを着ている至って普通の店員の格好だ。
他に人が居ないので彼一人で切り盛りしているのだろうと思われる。
髪の毛は黒く、どことなくミステリアスな雰囲気を出しており、いかにもマスターらしい。
「いらっしゃい、好きな席にどうぞ」
「あ、いやあの……日向署の刑事課から来た南碧なんですけど……ここが特殊捜査課ですか?」
マスターは碧を見て、微笑み、答える。
「ああ、そうだよ。君が南碧……君だね」
「はい、よろしくお願いします」
「僕は
「それじゃあお言葉に甘えて」
北崎はコーヒーサイフォンからコーヒーをカップに注ぎ入れ、受け皿にスプーンを置いてカウンター席に座る碧の前に差し出した。
碧は熱いコーヒーを息で冷ましてゆっくりと飲む。
その味は程よく酸味が舌をつつみ、あとから来る苦味が癖になる。
すっきりとした飲み心地で、とても美味しい。
もう一度飲もうとしたその時。
「たっだいまー!」
碧は驚いて熱いコーヒーが間欠泉の様に喉に吹き出し、碧はむせてしまった。
「いきなりなんで……ってあなた!」
両手に食べ物が入っているであろうエコバッグを持った東間が扉を勢いよく開けた。
「お前……あん時の女子中学生!」
「南碧です!」
「なんで女子中学生がここにいんだよ!」
「だから女子中学生じゃなくて南碧です! というかなんで東間君も居るんですか!」
「ここでバイトしてんだ俺は!」
東間はエコバッグを置いて店の制服を着て、カウンターに付く。
「東間君には社会勉強も兼ねてここでバイトしてるんだ」
「おい、北崎。なんでここに女子中学生を呼んだんだ」
「だから私は南碧です」
「今日から碧君は特殊捜査課を兼任してもらうんだ。君はまだ未成年だから協力者扱いだけど、碧君は正式な捜査員だから、ちゃんと名前で呼んであげな」
「……嫌だ」
東間は拗ねたように言った。
「そんなんじゃ社会に出てろくな大人にならないですよ」
「……ってか、なんでそんな堅苦しいんだよ」
東間はぶっきらぼうに言う。
「仕事ですから」
「あんまり固く無くていいよ、碧君」
北崎は碧の両肩を揉んで肩の力を抜かせる。
その揉み方は抵抗感はあまりなく、どこか懐かしかった。
「……はい」
「ぬあああああああああああぁぁぁ!!!」
東間はそんな2人を見て叫ぶ。
その叫びはどことなく嫉妬心が混じっている様だ。
「どうした東間君、嫉妬かな?」
北崎は東間の耳元で、囁く。
「もしかして、碧君のこと……」
「うわあああああああ言うな言うな言うなぁ!」
東間は顔を赤らめて奥の厨房に逃げ込んでしまった。
「何よあの子……男の子の思春期ってあんな感じなのかしら」
「……そうかもね」
北崎は自分で入れたコーヒーを飲みながらに微笑む。
「それで、早速仕事なんだけど。2人には学園に潜入捜査をしてもらいます」
「「え?」」
2人は同時に答えた。
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