第13話 外 泊

花火大会の帰り、私は祐哉と帰る。




「線香花火…」



私はある店の花火に目が止まる。




「する?買って来るけど?」

「…ううん…大丈夫」

「遠慮しない!待ってな!」



祐哉は買いに行く。



「何処でする?河原?」

「ありがとう。うん…」



私達は移動する。





ジリジリ……



パチパチ……





線香花火を手に


会話はなく


ただ ただ


花火の音だけが


光り輝き


下に落ちる



こんな二人の時間が


当たり前になっていた





「祐哉…どうして、あそこにいたの?一人屋台巡り?」


「ハハ…何、その屋台巡りって初めて聞くんだけど」


「いや…一人で来てた感じみたいだから」


「うん。一人。だって誰かさんみたいになりたくなかったし」


「えっ?ちょ、ちょっと!」




クスクス笑う祐哉。



「まあ、知り合いが屋台を出してたから来たのもあるんだけど……」


「やっぱり屋台巡りだ!」


「じゃあ、友霞ん中では屋台巡りな。その屋台巡りしている時に、もしかして出逢うかもしれないという確率に賭けてる部分もあった……あんたに」

 



ドキン



「えっ…?」


「偶然の巡り合わせの多い俺達に、会えないって時あんのかな?なんて……」


「そうしたら会えた……本当…偶然にも凄い奇跡的だし。凄い確率だよね。後、どうしてアドレス変えたの?」


「前彼女(カノ)とか、女友達とか連絡しなくなった子とは縁切ろうと思って」


「えっ?」


「彼氏いる女性、俺の携帯に残しておく理由なくね?」


「それは…」


「もしかして友霞は残しておいた方が良いの?俺、無理!彼女が、元彼とかの連絡先とか残したままとか…まあ、無理はしてほしくないけど…」




そして花火を終え帰る事になったんだけど……




「今日は色々とごめんね。ありがとう。祐哉がいてくれてよかった。それじゃ」



帰り始める私。




「………………」




グイッと引き止められた。



ドキン



「…祐哉…」

「振り向かないで!」

「えっ…?」

「1つ…お願いがあるんだ」

「何?」


「最初で最後のお願いかも」

「お願い?何?」



「………………」



スッと背後から抱きしめる祐哉。


ドキン



「…祐哉…?」

「…ごめん…やっぱり…いいや…」

「えっ?」




スッと私から抱きしめた体を離すと帰り始める。




「祐…ちょっと!待…」




プチッと鼻緒が切れた。



ガクッ


「きゃあっ!」



転びそうになる私。



「うわっ!友…」




ドサッ


私を抱き留める祐哉。




「………………」




ドキーーン

至近距離にある祐哉の顔に胸が大きく跳ねた。



「ご、ごめん…」

「計算?」

「えっ!?ち、違います!」



私は慌てて離れ足元を見ては腰をおろす。




「鼻緒…切れちゃった…」

「28年も履いてりゃ切れるよな?」

「だから、28じゃなくて…!」


「まだ、27」

「そ、そうだよ!年増やさないで!!」

「はいはい」


「…でも…27年なんてものじゃないかも…」



鼻緒の切れた下駄を見つめる。



「えっ?」

「母親譲りだから…27年以上かもしれないね…」

「そうか…」



鼻緒の切れた下駄を手に取り立ち上がる。



「…帰ろ…じゃあね!ゆ……」




キスされた。



「どうやって帰んの?」

「えっ…?」

「それじゃ、無理じゃね?」

「…それは…」


「泊まれば?」

「えっ…!?」

「家に」

「いや…それは…」


「それじゃ、まず無理でしょう?車ねーし、タクシー拾うかしねーと…」


「そうだけど…」


「まあ、無理は言わねーけど、帰りたければ帰れば?」




「………………」






次の日――――




俺は、目を覚ます。

隣には、好きな女性(ひと)が寝ている。


昨日、最初で最後の俺の願いとして勇気振り絞って頼んだのがきっかけだ。


俺にしてみれば運良かったと思う。


二度とない奇跡を俺は二人きりの時間を過ごせたのだから―――




「だけど…キスだけで済んだものの…普通、こんな格好で寝るか?」




俺の方向に横向きで寝ている彼女の姿。


シャツから見える肌に目を奪われる。


ましてや好きな女性だから尚更だ。




「ある意味セクシーショットだけど…」



俺は彼女の髪に触れる。



目を覚ます彼女。




「おはよう。眠りの森のお姫様。綾瀬友霞さん」

「おはよう…祐哉…」

「今、コーヒー作る」

「…うん…」





年下の男の子の部屋にお泊り


まだ微妙な関係


キスだけじゃなくて


一層のこと


1つなっても


良かったのかもしれない……






「友霞、今日、この後どうする?一先ず一回帰らねーとなんねーだろうし」


「そうだね」



私達は朝のコーヒーを飲み外出することにした。



一先ず自分のマンションへと移動。





「着替えてくる。祐哉も部屋にあがって」

「いや…でも」

「遠慮しないで、どうぞ」



私は祐哉を部屋にあげる。



「ゴメンね〜。バタバタで散乱してるけど…」

「いや、だったら普通あげねーだろ?」


「でも、お互い色々曝け出せて、ありのままの自分出さなきゃ駄目なんでしょう?」


「まあ…でも…嫌いになったらどうすんの?」


「人間、価値観違うんだよ。好きなら受け入れなきゃ。まあ、努力しても本当に無理なら仕方ないけど。その時は、次の恋だね。コーヒーでも飲む?」


「大丈夫」

「時間かかるよ」

「まあ…女の子は時間かかるの想定内だし」

「そう?じゃあ待ってて」

「ああ」



私は準備をする。




「どうしよう??決まんない…相手20歳だし…ていうか…何…私…手間暇かけてるんだろう?」


「友霞ーー、準備、出来たーー?」

「祐哉ーー、決まんないよーー!」

「別に、いつも通りで良いんじゃ?」


「そういうわけにはいかないよ!だって、祐哉、20歳だし、私、27歳だし!」


「大丈夫だって!」


「大丈夫じゃないってば!だって祐哉が人間疑われちゃうよ」


「えっ?いや…つーか…無理する方が逆に…」




ガチャ


私は部屋からチラリ下着姿が見える位の範囲のドアから顔をのぞかせる。



「わっ!ちょ、ちょっと…!友…」




目をそらす祐哉。


ちょっと赤面している祐哉が可愛く見える。


案外、純な所があるんだ!


そう思った瞬間だった。




「案外、純なんだね」


「好きな女が、そんな格好で目の前に現れたら、目のやり場ねーから」


「祐哉、コーディネートして!」

「えっ!?コーディネートって…」


「私の事が好きなんでしょう?だったら、私を祐哉色にして!年下と出かけるなんて滅多になかったから!だから、お願い!」




「………………」



祐哉は、部屋に入って来る。




「すっげー、散乱してんだけど……」

「仕方ないじゃん!」



その直後――――



「あっ!コレ!」



すぐに決まった。



「…おかしくない?27だよ私」

「すっげー、似合ってる。可愛いじゃん!」



ドキッ



「つーかさ、着るつもりで買ったんじゃねーの?」

「そうだけど…結局着る勇気なくて…そのまま」


「もったいなくねー?まあ、これを機に着る機会があったってわけだ。つーか、太ってなくて良かったな?」




ムカッ




「いつ買ったか知んねーけーど」

「あのねーーっ!!一言多…っ!」



ドキン


キスをする祐哉。



「待たせた罰…なーんて!」

「キ、キスしたかっただけでしょう?」


「それもあるけど……友霞が俺の事を考えてくれたのが嬉しくて」


「…それは…」



再びキスされ、深いキスをされる。



「このままだと、止まらなくなりそうだから出かけようぜ」


「う、うん…」




私達は出掛けた。






車の助手席に乗り


車の中で曲を聴きながら


時々 会話したりして


デートを楽しむ




年の差あっても


音楽通して


趣向が一緒だったと気付いた


嬉しい瞬間があったり



自分の耳馴染みじゃない時


CDショップに行って


そのCDを手に取ってみたり


相手の事を知りたがる


自分がいる



愛の力って


凄いね








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