第12話 今日一日だけの限定花火〜華、咲かせます~
♪〜♪♪〜
『花火大会行けそう?』
『こっちの都合は良いけど、友霞改めて連絡ほしい』
義成から一通のメール。
花火大会前のお誘いメールだ。
♪〜
『うん、大丈夫』
♪〜♪♪〜
『分かった。じゃあ迎えに行く』
♪〜
『分かった』
そして花火大会の当日――――
♪♪♪〜
「電話」
私の知らない所で、携帯に着信が義成に入る。
「公衆電話…友霞かな?」
義成は、私と思い一先ず電話に出る。
「義成?」
「誰?」
「ごめん!アヤ」
「アヤ?どうして公衆電話…」
「義成の名前が携帯のメモリーに残ってて、それ見て彼氏にバレちゃって携帯取り上げられたの!説明しても信じてもらえなくて…」
「えっ?今、何処だ?大丈夫か?あいにく、俺、今から用事…」
「そうだよね…ごめん…大丈夫。それじゃ」
「待って!すぐ行くから場所言って」
♪〜♪♪〜
『ごめん。友霞、急用が入った』
『用事が済んだら、すぐそっちに向かうから。後で連絡する』
♪〜
『ごめん、義成、急用入った。もう向かってるよね?』
『現地で待ち合わせしない?また、連絡する』
確認することもなく携帯をしまい
遅れて入るすれ違いメール。
そして―――――
♪〜
『義成、もう来てる?まだ?連絡ちょうだい』
♪〜♪♪〜
『ごめん。友霞、急用が入った』
『用事が済んだら、すぐそっちに向かうから。後で連絡する』
「えっ…?ていうか…これ…」
私は電話をする。
【…電波の届かない所に……】
「よりによって携帯繋がらないし…」
ピューーー……
ドーーーーン……
パラパラパラ……
一発目の花火があがる。
「花火…始まっちゃった…」
♪〜♪♪〜
『ごめん…行けそうにない』
『今、何処にいる?』
『もしかして花火大会の会場にいる?』
義成からメールが入ってきた。
♪〜
『ううん、大丈夫!』
『メール確認してたから』
♪〜♪♪〜
『そうか。本当、ごめん』
『現地集合みたいなメール来てたから気になって』
♪〜
『大丈夫。今日は仕方ないね。それじゃまたね』
画面には映らない
お互いの状況
ただ ただ
メールのやり取りだけ
本当はお互い
嘘をついている事
目には見えないからこそ
嘘をつける
相手の隣には
元彼女(カノ)の姿
そして……
私の隣には誰もいない……
たくさんの人混みが行き交う姿と
花火のあがる音だけが
ただ ただ
響いていた…………
「…帰ろう…」
帰り始める私。
♪♪〜
私の携帯にメール着信音
見慣れないメールアドレスが綴られていた
「…メール…?イタズラ…?」
♪♪〜
『浴衣似合ってるよ』
『一人で花火大会に来たの?』
♪〜
『誰ですか?』
『送る人間違っているんじゃないんですか?』
♪♪〜
『間違ってないよ』
『君に送ったメールだから』
♪〜
『新しいナンパ?二度とメールしてこないで!』
私はメールを返信し、電源を切り、足早に帰る。
「全く浴衣着て見せる人もいないし、一緒に見る人もいない。本当、バッカみたい!しかも変なメールも入って来るし…最悪な日だよ…」
ピューーー……
ドーーーーン……
パラパラパラ……
足を止め花火に目をやる。
「………………」
「…祐哉…彼女と来てるのかな…?」
私は祐哉との約束が脳裏に過る。
【来年の夏さ、約束しねーか?あんたと俺で花火を見に行くって…彼氏彼女がいても友達として行くの…】
【いつか俺、あんたの花火になれるかな?】
【……線香花火でも、ねずみ花火でも良いから火が消える前に花火に火をつけてつないでくんね?】
ピューーー……
ドーーーーン……
パラパラパラ……
ピューーー……
ドーーーーン……
ドーーーーン……
ドーーーーン……
パラパラパラ…
「…私の…花火が…消えそうだよ……祐哉……」
私は涙がこぼれそうになる。
「…綺麗な花火も…今日は…霞んで見える……」
私は一旦、携帯の電源を入れた。
メールが入ってくる。
♪〜♪♪〜
『ごめん……元カノから連絡入って、そっちに行った。嘘はつけないからメールした』
『彼女、色々あったみたいで…マジ…ごめん…』
「…今の…彼女よりも…元カノ…か…結局…義成の心の中には…私は…いなかったのかな……」
涙がこぼれる。
「………………」
グイッと抱きしめられた。
《えっ…?誰…?》
私は離れようと抵抗するも、力が出ない。
「花火が綺麗すぎて感極まって涙出たの?良い年して花火で号泣?」
「ち、違…っ!」
キスされた。
ドキン…
「…ゆ…う…や…」
「28歳になるオバサンだから感動の涙出たんだ」
「…27だよ…それに…感動の涙…」
再び抱きしめられた。
「彼氏と来るんじゃなかったの?」
「………………」
「せっかくの浴衣が意味なくね?じゃあ誰に見せんの?」
「………………」
私は抱きしめられた体を離す。
「ごめん…。さようなら!放っておいて!!彼女に誤解されたらかなわないから!帰る!!」
「えっ!?彼女!?」
グイッと引き止められた。
「彼女いねーけど?」
「嘘ばっか!騙されないから!」
私は振り解くもすぐに引き止められた。
「待てって!!何か心当たりあんの?俺が彼女いる素振り見せた?だとしたら誤解とかせろよ!好きな女性(ひと)に誤解されたまんま別れるわけにはいかねーから!」
「………………」
「友霞…話してくんねーか?あんたが気にしてる事、引っ掛かっている事…感情的にならないで話してほしい。それとも、こっちから質問……」
私は話をした。
「みおは、イトコ。あの日、俺バイトで来てるの話したよな?」
私は頷く。
「俺のバイト先、夏限定だけど…」
「………………」
「信じられない感じ?疑いの眼差し…」
「……………」
「じゃあ、それならそれでいいよ。本当の事なのに、これ以上、話す理由ねーから。じゃあな」
祐哉は去り始める。
グイッと祐哉の洋服を掴み、背中に顔を埋める。
「…祐哉の…線香花火で…私の線香花火に火をつけくれないかな?……私の花火が…消えそう…」
「…無理…友霞が消えかけてるなら…俺のも消えかけてる。だから火はつけれない。……でも…1日限定の大きい花火なら俺はつけれる自信はあるけど?」
「…えっ…?」
向き合う私達。
「俺にとって友霞が大きい花火だから…大空に広がる大きい華だから…友霞の大きい花火の華が綺麗に輝く為なら、俺は何度も何度も火をつける!でも…今日だけ限定の…特別な花火な!……傍にいてやるよ」
私は祐哉の胸に顔を埋める。
祐哉は、抱きしめてくれた。
年下なのに
生意気な口叩く時あるけど
何かあった時
いつも傍にいてくれる
こんなに想ってくれてるのに
私は自分の想いに気付いていなかった
『後 悔』
と い う 言 葉 が
自 分 の 身 に
降 り か か る な ん て
知 る 由 も な く―――
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