第7話 Promise 〜 約 束 〜
それから月日が流れ――――冬
祐哉君からの連絡は、一切ないまま、あきらちゃんの連絡で彼の存在を勝手に身近に感じていた。
ある日の事―――――
「あら?祐哉、久しぶり!」
背後から聞こえる会話。
それは私が一人、オシャレなバーで飲んでいる時の事だった。
「美鈴(みすず)…」
私は振り向きチラッと見る。
「ここ良い?それとも、誰か連れがいるのかしら?」
「いや…」
《うわっ…祐哉…って…やっぱり、あの祐哉だ》
《つーか…アイツまだ…19…》
《年上好みって…あきらちゃんの言う通り…》
《…何…話してんだろう?》
私は聞く気はなかったけど時折、聞こえる会話に耳が傾く。
《駄目だ!26歳の私、何してるんだ!》
「祐哉、これ、私の今の連絡先。もっとゆっくり話がしたいから都合の良い日、教えて。それじゃ」
「待てよ!連絡、待っても俺は連絡しないと思うけど」
「それでも良いわ」
「………………」
「それじゃ」
女の人は帰って行くのだった。
「………………」
《バレないようにしよう》
《ていうか…こんな所で、まさか出くわすとかどれだけの確率なわけ?》
私はとにかくバレないように、見て見ぬふりをしてカウンターにいた。
「隣、良いですか?」
ドキッ
「えっ?あ…はい…どう…」
ドキーッ
「祐…哉っ!」
「一人?それとも連れいんの?」
「いません!」
「だよなー。ガード堅いらしいし。男も簡単にできねーよな?」
「いけない?ていうか誰からそんな事…」
「あんたの友達」
「あゆみかーー」
「なあ!」
「何?」
「まだ飲みたい?」
「えっ?」
「ちょっと付き合って欲しいんだ」
「私が!?私よりも、あきらちゃんに……」
「あんたが良いんだよ!」
ドキン
「まあ、用事あるなら良いけど。無理に言わない。どうする?」
「辞めとく。誤解されたらかなわないし」
「あっそ!それじゃ」
帰って行く祐哉。
「待って!すみません!お勘定…」
「来るんだ」
「だって…」
「彼女の分も一緒にお願いします」
「駄目!貸し借りしたくないから」
「良いから!付き合わせる変わりに俺に出させろよ!」
「…でも…」
「あんたは貸し借りしたくないだろうけど…年下とか年上とか…そんなの抜きに俺は、あんたと向き合いたいの!」
「……分かった…じゃあ、今回だけだからね!」
「だから、その今回だけっつーのもいらないから!」
「ねえ、あんた19だよね?未成年の飲酒は…」
「いつまで19なわけ?もう20だし。あんたも27っしょ?」
「違います!26です!」
「たかが1つ」
「その、たかが1つが大事なの!」
「どんだけ拘りあるわけ?」
「女心、分かってないな~」
「分かりたくない!つーか…好きな女(ひと)以外は…分かりたくねーな」
「1歳でも若くいたいの!」
「1歳も2歳も変わらねーだろ?年の功は身体と共に年を取るって」
祐哉の両方の頰をつまむ私。
「…いたい…」
「あなたの、その性格、本当ムカつく!性格直さなきゃ、イイ男も台無し!」
パッと離す。
「イイ男だから性格が悪いんだ!」
「あー、そうかもねっ!ていうかさ、さっきの女の人に連絡してあげたら?」
「ただの偶然」
「そんなわけないでしょう?でも、それってつまり、その言い方から推測すると祐哉は思い出のバーに来てたわけだ。ただの偶然なんて、おかしい話」
「確かに元彼女(カノ)が通っていたバー。それだけじゃない。俺は、あそこのバーで、バイトしてた。正直、久しぶりに足を運んだんだよ」
「………………」
「…バイト…してたって…」
「…だから、あんたも良く来ていたの知ってる…男と」
「………………」
「そして…あんたが来なくなって俺も辞めた」
「…嘘…祐哉…本当なの?」
「嘘ついて、どうすんだよ…あんたは知らないかもしれねーけど…俺達は前に会ってんだよ…」
「………………」
「なあ…来年の夏さ、約束しねーか?」
「えっ?」
「あんたと俺で花火を見に行くって。お互い彼氏彼女いても友達として行くの。一回くらいチャンスはあるだろう?花火大会は一回切りじゃないんだ。色々な所で催しはあるんだし」
「…祐…哉…」
「俺。まだバイトでフリーターしてる状態だけど…でも、あんたとの約束守るから」
「…そんなの…」
「だから…せめて、メールのやり取りだけでもしてほしい…」
「…でも…」
「あきらの想いは俺知ってる。アイツが俺の事を好きだって事も…」
「だったらそれに答えて……」
「出来ねーんだよ!」
「…祐…」
「俺の中にアイツはいねーし、だからって…あんたの中に俺はいない……。でもっ!それでも…こうしてあんたといられるだけで俺は幸せで……さっきの女は元彼女(カノ)正直、彼女は心残りではあった。でも…あんたも心の中にいた」
「えっ…?」
「バイトしている時、俺のストライクゾーンで、めちゃくちゃタイプの女だって。そんな中、さっきの彼女に告白されて胸に秘めた想い隠し通して彼女と付き合った」
「………………」
「すっげー、最低な男かもしんねーけど…でも…彼女への想いも本気(マジ)だったし…」
「…祐…」
グイッ
私を抱き寄せる祐哉。
ドキン
「ちょ…ちょっと…待っ…恥ずかし……」
「27のくせに意外!案外、純なんだ」
ムカッ
「なっ…!だ、だから、26…」
スタッ
スッと離れ走り去る祐哉。
「ちょっと!祐哉っ!待ちなさいよっ!」
街中を
人混みの中を
駆け走る私達
そして
線香花火の導火線が
筒型の花火の導火線に変わる
大空に大輪の花火が
華開くのは
遠くはない?
―――でも―――
私の心は
線香花火のままだったのかもしれない……
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