第6話 遊園地で……
「祐哉!」
俺の元に一人の女性が現れる。
「あきら」
「ねえっ!ちょっと付き合って!」
「えっ?」
「お願い!」
「いや…俺じゃなくて友達の羽那(はな)誘…」
グイッ
俺の腕を掴む。
「うわっ!」
「祐哉じゃなきゃ駄目なの!」
「えっ?どうして?」
「どうしても!ねっ?良いでしょう?」
「あー、分かった、分かった。用意すっから待ってろ!」
「ヤッタ!ありがとう!祐哉♪」
彼女は、田村あきら。19歳。浩史の友達の友達。
高校の時、仲良くなった女の子だ。
彼女は、可愛いく、誰からも人気はあるが、俺の好みには当てはまらない。
俺自身が同級生や年下は合わない事を良く知っている。
そんな彼女が、俺に好意がある事は薄々、気付いているが確信ないし、告白してこない所をみると、仲が壊れたりするのが嫌なんだろうと感じている。
男女の友情は成り立つとは思うけど人それぞれあるだろう。
俺は用意し、あきらと出掛ける。
「実は、遊園地デートなんだ♪」
「は?遊園地デート!?」
「うん!あっ!もちろん、二人じゃなくてグループフレンドデートだよ」
「ふーん…つーか、なんで俺?他にいるだろう?」
「言ったでしょう?祐哉じゃなきゃ駄目だって」
「それは…」
「とにかく!付き合ってね♪」
つまり俺じゃなきゃいけない理由。
一緒に周れる。そんな所だろう。
自分に自信があるわけじゃないけど、俺が、綾瀬友霞、に対する対応と同じだからだ。
彼女と一緒にいたい。
俺は何度も断られつつも、傍にいたいと思うのが本音だ
追えば追う程、離れていく彼女だけど…
俺の中の彼女は正直、一人の女性として接している。
✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕
「あゆみっ!ちょっと待ってよ!」
「ほら!早く早く!」
あゆみは足早に行く。
実は私達も偶然にも同じ遊園地に足を運んでいたのだ。
そんな事とは露知らず…
「ねえ、女の子二人ってさ超寂しくない?」
「男いたら、さらけ出せないでしょう?男にフラれたなら、女同士で愚痴こぼし大会!ワイワイ騒いだ方が良いんだって!」
「いや…でも…25だし…遊園地も…」
「遊園地に年齢制限あったら家族連れは、どうなんの?」
「えっ…?そ、それは……」
「ほらっ!」
私達は遊園地を楽しむ。
そして――――
「祐哉!こっち、こっち!」
「えっ!?」
私の腕がグイッと引っ張られ、あゆみから私が離れて行き始める
「ちょ、ちょっと…!」
私を連れて行く人は聞こえていない様子。
「ちょっと…!」
私達は観覧車に乗せられた。
「ねえ、祐哉……えっ?やだ!祐哉、いつからそんな趣味に…?」
「いや…違うから!」
「ちょっと!祐哉は?」
「知らないわよ!」
「………………」
✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕
「…あれ…?」と、あゆみ。
「どうも!一人で遊園地ですか?確か…綾瀬ちゃん…もとい…綾瀬友霞さんの…」
「ええ、その友霞が一緒だったんだけど…ちなみに、私は一人で遊園地には来てないから。あなたに入れ替わってるのに驚いてる所なんだけど…」
「25歳で迷子の仔猫ちゃん?彼女を迷子センターから呼び出さなきゃいけませんね」
「そうね」
「でもそれは必要ないと思います。間違ってなければ多分、俺の連れが拉致って行ってましたよ」
「えっ…?」
「あー、誤解されてたらいけないので言っておきますけど、女友達ですよ。気付いたら俺の連れと一緒に観覧車に乗り込んでました。連れの勘違い?みたいなもんですよ」
✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕
「あなた美人ですね!?さぞかしモテモテでしょう?」
「違います!」
「えー、男の子、放っておかないんじゃないの?」
「あいにく、その男にフラれて、そう日にち経ってないご身分なの!」
「ふーん…じゃあ、その気晴らしに一人遊園地?アハハハ…まっさかー、嘘でしょう?オバサンいくつ?」
「お、オバサンって…あのねーーっ!!私、まだ、25なの!!」
「まだじゃなくて、もうでしょう?私達からしてみれば、25は、オバサンなの!オバサンの仲間入りだから!」
「………………」
「だけど…祐哉は年上が好みなんだよね…悔しいくらい、あなたみたいな年上女性が好きで…近付けば近付く程、祐哉は離れていく…」
「…………………」
「あっ!祐哉って、私の男友達なんです。私…すっごい彼が好きなんだけど…全然振り向いてくれないの…やっぱ色気ないから……」
「色気があるとか無いとか関係ないんじゃないかな?あなた可愛いし、なんかギュッとしたくなるような良い意味で魅力的な女性だと私は思うけど…私にないものあなた持ってるし逆に羨ましい。あなたこそ男の人に人気あるんじゃない?」
「告白は確かにされる事は多いけど…好きな人に振り向いてもらわなきゃ意味ないんですよ」
「…彼には想い伝えたの?」
「いいえ。伝えて仲が壊れるの嫌なんです」
「そうか……」
「あの!」
「何?」
「私のお姉さんとして良き相談相手になって下さい!これも何かの縁だと思うんです」
「いや…でも…私…人生経験豊富じゃないし…ましてや恋愛なんて…」
「それでも、私の相談相手になって下さい!お願いします!これ連絡先です!」
「えっ!?」
「あの…お姉さん、お名前は?私、あきら。田村あきらって言います」
「私は…友霞……。綾瀬友霞」
「綾瀬友霞さん。OKです!友霞さんの連絡先、教えて下さい!」
「えっ?」
「だって、相談出来ないし。念の為、キチンと交換はしておかないと違う連絡先になっちゃいますから」
「あー…」
私達は連絡先を交換した。
✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕
「彼女の連絡先、教えて下さい!」
「えっ!?友霞の?まだ、連絡先交換してないの?」
「はい…全然、教えてくれなくて…うまく交わされてるっていうか…俺のは教えてあるんですけど…」
「へえー…その前にどうやって友霞と?いつから?」
「花火です!花火がきっかけで…」
「花火ぃっ!?」
「はい」
「花火……ね〜…そう…なんだ…でも、それだけじゃ難しい話よね?あなたのは教えてあるのに連絡先交換しない限り無理だし、本当、偶然出くわさない限りは無理でしょう?」
「偶然の何度かの再会で今を至ってます」
「は?やだ!まるで運命的な出会いみたいな?でも…再会する度にチャンスはあるのに連絡先交換しないって…あなた友霞に余程、嫌われてるんじゃない?」
「…え"っ"……!?…嫌われ…てる…?…やっぱり…そうなの…かな…?」
「…アハハ…やだ!冗談よ!面白ーーい!素直に反応するから」
「えっ?ちょっと!俺を年下だからって、からかってオモチャしないで下さいよ!」
「ごめん、ごめん。友霞、ガード堅いし、25歳だから、尚更、今、特に恋愛には慎重なってるの。この人ならと思えないと恋愛に発展しにくいし長続きもしないし心開かないわよ。しかも、今は彼氏にフラれて間もないから」
「やっぱり年下って…彼女にしてみれば恋愛対象外ですか?」
「さあ?はい!これよ!友霞の連絡先!」
「おっ!ヤッターー!ラッキー♪」
「ともかく!あの子とマジ(本気)に恋するなら忍耐と我慢と、うまくアピールしなきゃ無理だと思うけど?」
「そうですか…」
「そうだと思う。ていうか付き合う気?」
「いいえ…と言うと嘘になります」
「そうなんだ」
「だって!俺のストライクゾーンだし!それに…」
「それに…何?」
「いいえ!ありがとうございます!」
そして私達は合流した。
「あっ!祐哉ぁーーーっ!」
「うわっ!」
彼に抱き付くあきらちゃん。
紛れもなく彼だった。
祐哉と私はお互い他人のように知ってる素振りなど見せず知らないふりをしていた。
「じゃあ、友霞さん、連絡しますね♪」
「あ、うん…」
あきらちゃんは、そう言うと私達は別れた。
「不思議な光景よね?」
「えっ?」
「本当は知り合いなんでしょう?彼と」
「えっ…!?……それは……」
「隠さなくても良いよ。本当、偶然の再会も続くと何かしらの縁があるんだろうね」
「えっ?アイツ何か言ってた?」
「うーん…まあ…」
「そう…なんだ…」
俺は、彼女を見つめる。
本当
不思議なくらい
こうして何度も
彼女と色々な場所で出くわすのは
俺も驚いている
そして…俺は……
彼女との縁を切りたくないと
この瞬間は
思っていた……
だって…俺は…
彼女と別の形で
出会っていたのだから―――
俺しか知らない
あの頃の出会いを
―――― 今 ――――
俺の中で
消えていた花火を
咲かせたいと
思っていたのだから――――
俺は
彼女の花火になりたい
そう思っていた……
その日の夜――――
『こんばんは』
『携帯に登録しておいて下さい』
『綾瀬友霞さん』
そういう1通のメールが入って来た。
「誰だろう…?あきらちゃんならあきらちゃんの名前が出るはずなんだけど…また、連絡先変えたのかな?」
私は返信する。
『あきらちゃん?』
『連絡先変えた?』
♪♪♪〜
『残念でした』
『要約、手に入った』
『あんたの連絡先』
『みずきりゆうやでーす』
「えっ!?祐哉君!?なんで?どうして?」
♪♪〜
『祐哉君!?』
『連絡先変えよう…』
♪♪♪〜
『そんな事したら、あきらと連絡取れなくなるんじゃねーの?』
『アイツ、あんたの事、良きお姉さんって感じで話してたけど?』
『もし変えるなら、それはそれで良いけど、みんなに報告面倒だし、大変なんじゃ?』
♪♪〜
『構いません!』
『あなたに知られる位なら変えた方がマシです』
「なんか冷てーな!俺、そんなに嫌われる事したか?」
♪♪♪〜
『なあ、どうして、そんなに嫌うの?』
『俺、あんたに何かした?』
『嫌うのは構わねーけど、すっげー淋しいんですけど』
『まあ、良いや。そこまで言うなら連絡しねーよ』
『だったら良いんだろ?』
『悪かったな…2度と入れない』
ズキンと何故か胸の奥が痛む。
♪♪〜
『それで良いの!』
『2度と入れて来んな!』
「はいはい。分かりました」
そして、連絡は2度となかった。
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