第2話 別れ話
『友霞へ』
『花火大会、行けそうだから出かけよう 義成』
そう受信された一通のメール。
数日後の夜――――花火大会当日。
「じゃあ、行くか」
「うん」
《浴衣…辞めた方が良かったのかな?》
前なら
【似合ってる】とか
【可愛い】とか
言ってくれてたのに―――――
「ねえ、義成、何か食べない?」
「いや、俺は良いや。ごはん食べて間もないし」
「…そうか…」
楽しいはずの夏祭りが
つまらない
何の為の夏祭り?
屋台の出店を周って
夏祭りでしか味わえない
食べるものが
たくさんあるのに
花火の為だけに
足を運んだの?
だったら……
浴衣着て
夏祭りデートなんて
しない方が良かった……
「祐哉、祐哉。ねえねえ、たこ焼き食べない?」
「たこ焼きかー。いか焼きも良くね?」
「いか焼きかー」
「じゃあW(ダブル)な」
「えー、やだ!太っちゃうよー」
「太っちゃえ!」
「あのねー、酷くない?」
若いカップルと思われる会話。
すれ違う私達。
「ねえねえ、今のカップル何か冷めてたね?」
「あー…まあ…付き合いが長いからじゃねーの?」
「あー…」
「良い意味でな」
「えっ?良い意味?」
「そう」
「良い年齢なら落ち着いたカップルってやつ?」
「えーー?そう?」
「そうだって」
そして――――
ピュ〜〜〜〜……
ドーーーーン……
パラパラ……
「義成、花火、綺麗だね?」
「ああ」
「ねえ、もっと、こう感情ないの?」
「別に5年も付き合ってる彼女が隣だし…花火も毎年一緒に見え…」
「………………」
「…あ…いや…えっと…悪い……」
「…義成…私の事…嫌いになった?」
「えっ?あ、いや……」
花火が上がる最中
私達の空気は
冷めていた
賑わう
花火大会 と 夏祭りの夜
恋の華は
大きく開かない……?
「………………」
「友霞……ごめん…」
「5年も付き合っていると、やっぱり倦怠期もあるよね…」
「…友霞…」
「…それとも…他に……好きな子でも出来た…?」
「………………」
「…何も…言わない…って…事は…そうなんだね…」
「いや…別に、そういうわけじゃ……」
「…ハッキリ言ってくれないかな?」
「………………」
私は背を向ける。
「…友霞…」
「帰る…」
私は帰り始める。
「…友霞…俺と…別れて欲しい……」
ズキン…
「…ごめん……こんな時に…こんな話……」
「…そうだよ…こんな事なら…最初から約束しなきゃ良かったんじゃない…?それとも…計画的だったのかな…?」
「…いや…そんなつもりは…」
「…ごめん…言い辛かったよね…それじゃ…さようなら…」
私は走り去った。
大きく華開く花火の夜
私の恋の花火は
幕がおりた……
花火大会の日
二度目の恋が
終わった……
線香花火が
消えて落ちるように………
その途中―――――
ドン
誰かとぶつかる私。
ドサッ
「きゃあっ!」
「うわっ!」
ぶつかった拍子に転倒する私。
「祐哉、大丈夫?」
「ああ、俺は大丈夫。あの、大丈…夫…」
手を差し出されるも私は、スッと立ち上がり走り去った。
「何?あれ!超感じ悪ーーい!」
「トイレに行きたかったんじゃねーの?」
「えっ?…ちょっと!やだ!人が食べてる時に」
「いや…悪い。でも、そういう事ねえ?」
「もうっ!祐哉っ!」
「ほら!花火、花火」
そして、俺は、地面に視線を落とす。
「…落とし物…ハンカチ…?」
俺は落とし物を拾う。
「祐哉、どうかした?」
「えっ?あ、いや。蚊!」
俺は、落とし物をポケットにしまう。
「えっ?」
「チクってしたから」
「蚊?あー、そうなんだね」
「ああ」
《さっきぶつかった人のかな…?》
《…つーか…彼女…泣いてた気が…》
「…………………」
私達の出会い
だけど まだ
アカの他人でしかなかった……
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