第17話 初めて名前を読んだその時は(その名前)

干からびた唇、骨と皮だけの手、焦点の合わない瞳。


私は悟る。


彼はもう──。


荒廃した街並み。


戦はまだ続いているのか。


どうでもいい。


「み…お」


呼ばないで。


名前なんて情が湧くだけ。


だから呼ばなかったのに。


「──遼」


僅かに眼を見開き、彼は逝った。


口元に微かな笑みを浮かべて。


私は泣いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る