第12話 年に一度の里帰り(スイカ)

盆になると祖母は縁側に冷えたスイカを置く。


そよぐ風、風鈴の音、蚊取り線香の匂い。


ここだけ時間を切り取ったよう。


「今年もあの子がくるけんね」


母には弟がいたらしい。


戦争で死に別れたそうだ。


「私がいなくなった後もこの家は残しておくれ」


懇願する祖母の隣でスイカは跡形もなく消え去っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る