大好きな音楽~1~
誰かが私に「音楽が好きか?」と聞けば私は瞬時に「好き」と答えるだろう。何か物事が好きなことに理由は必要ないと思っているが、理由はもちろんある。ぼんやりとした何かではなく、ハッキリと、だれにでも伝わるように言える。理由は二つ。
まず一つ目の理由は吹奏楽部にある。私が吹奏楽部に所属したのは小学校3年生。当時に私は特に秀でたものがなく、自信を喪失、それ故にゲームに明け暮れる。そんな私を変えてくれたのが吹奏楽部、正確には音楽だった。最初はトランペットのような華々しい楽器に憧れいた。だが私に管楽器の才能はなかったようで、試しにやってみた打楽器の才能を発掘された。当時の顧問は「あら、打楽器できるじゃない。○○さん(打楽器の先輩)に教えてもらって。」と言ってその場を去っていった。私は不服ながらも打楽器の基礎練習をして、しばらくしたころ、いきなりドラムを任された。右手と左手、それぞれ異なる動きをするだけでも難しいというのにそこに両足までつけられたのだ。私はできない、でもやらなきゃと思い、練習に励んだ。その練習が功を奏したのか、ドラムの演奏は見事だったと聞く。それを見た先生は、今度は和太鼓を担当させた。それが小学4か5あたりの出来事、当時の私よりも大きい和太鼓は身も心も未熟な私には手の届かない楽器だと思っていた。演奏させられるだけならよかった。なんと、ソロを任されたのだ。吹奏楽部のソロはほかの楽器がコードを吹いていることも多いが、私の場合は完全にソロ、私以外が音を奏でない。とても緊張していたし、何よりも怖かった。自信なんて微塵も持ち合わせていない私は恐怖と緊張と、責任でつぶれてしまいそうだった。それでも、なんとか演奏をした。すると、大勢の人から賛美を浴びた。これまで誰にも褒められたことがなかった私が、今まで感じたことのない快感を浴びた。褒められたい、そんな欲求が人より強い私の生き甲斐が吹奏楽部だった。私の唯一の、居場所。
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