大事な話 (最終話)

やっぱり


大事な話は


会ってするものだ。



羅列された言葉だけでは、


相手の本心に辿り着けない。

















夜、彼と会った。



傷をつけた車を少し走らせた。

彼と私はまだ

本題に

入らなかった。



私たちはこれから大事な話をする。



それに見合った場所を探しに。







結局、あの日のカラオケに行くことに。


私は

謎の気まずさを隠して

いつも通りにしていた。


っていうのは、

多分

ちゃんとできていなくて、

この日だけは色々と漏れていたかもしれない。




彼も、同じだったのだろうか。


私はその時の彼の様子をあまり思い出せない。


それほど、

私は、

らしくなかった。









部屋へ案内され、いよいよ始まる。



今夜は歌いにも、弾きにも、来たのではない。




振られに来たのだ。






私は、話の主導権を彼に。




彼は、なんやら確認をしたがるかのように、

いくつか私に聞いてきた。


それがえらい続くのだ。






なんなんだ?


なんですぐに言わない?



『ごめん』の続きは、簡単なものだろう?



『ごめん』は、

彼が

私にした

初めての


私への、否定の表れだった。







私は耐えられなくなり、彼に言った。


『なぜ、すぐに振らないの?』

『なにを勿体ぶっているの?』




彼は、驚いた表情だった。


まさに、『え?』みたいな。



彼は、

なぜ私がそんなことを言うのか、

理解できていない様子だった。


私にそんなことを言わせる

何かをした覚えがなかった。



彼は、

『ふたりのための確認中』

だと言う。





ふたりのため?



私と彼の、?




私は振られに来た、のではない?



私は

勘違いでも

していたのか?



早とちりでもしたのか?



頭の中が『?』だった。



『ごめん』の真意は後に。





でも、頭の中の『?』は

すぐにどうでもよくなった。



もしかして、、、、




そのもしかしてだった。


彼は、どうやら、私を振るどころか、

私を受け入れようとしていた。




彼は

私と付き合うために

真剣だった。


互いの価値観の把握をしたかったらしい。

心配性の彼ならやりそうなことだ。



そのために今夜、この時間が設けられた。





私は、『準備』ができていなかった。


頭が熱くなっていくのを感じた。

それと同時に、

彼と目を合わせることが出来なくなった。



『振られるかと思ってたのにーーー!?!』


『付き合う、準備なんてしてないっつーの!?』



『あーーー』っとなりながら私は頭を抱え、

とりあえずこの確認作業を

長引かせようとした。






長い

長い

確認作業

が続き、


もうネタがつきそうだった。


彼は、

もういいでしょ?

みたいな、

待ちきれない様子が見え見えだった。





最後に、確認した。


『本当にいいの?』



私と彼は互いに確認した。






『はい。』


『よろしくお願いします。』





酷く私は緊張していた。

心臓の音がよく聞こえていた。







解放された。






彼は私の腕をなぞり、


そのまま


私の身体を彼の方へ引きずり込んで行った。


彼は積極的だった。






誰かと

こんなに強く抱きしめ合ったのは

いつぶりだろうか、




待っていた、この瞬間を。






彼の匂いに包まれて、

彼のぬくもりに触れて

私は

高揚とした

激しい感情、

欲求を

抑えきれなかった。


彼もそうだった。






私と彼は

少しだけ、少し、だけ


欲をぶつけ合って、


私は彼の中で溶かされていった。













続きは


私の部屋で


私たちは一夜を過ごした。







セックスはしなかった。

それは、また今度。








今夜は


キスを


飽きるまで、



もちろん、身体の隅から隅まで、ね。













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