特別な時間
私は
『草食系』『淡白』
だと、友人は言った。
かなり、前の話ではあるが。
だから、バレることはなかった。
私は演じるのが上手かった。普通の人間を。
深夜1時頃、友人は先に帰ってしまった。眠いとか、疲れたとかで。
彼も帰る、、、と一瞬よぎった。
が、
彼は帰らなかった。
ふたりっきりになった。また。
私たちは歌い続けた。弾き続けた。
そうするしかないのだ。
あくまで
彼と私は
ただの
先輩
と
後輩
僅かな、何かが起こるような期待をして、
起こるはずのない
『何か』に
期待をするのが、
なんだか、好きだった。
早朝、閉店時間10分前のコールが入った。
私と彼は店を出た。
朝が来た。一日の始まりだ。
空の明るさが少し憎く感じた。
わたしは、
この特別な時間が終わりかけていることを
酷く惜しみながら、
彼とたわいのない会話をして、
彼を送り届けた。
私は帰宅し、寝床に入った。
彼からLINEが来ていた。
最後の挨拶のような。
私はスタンプを送って、終わりにするのが、
無難だと思った。
私は、
彼の最後の挨拶に対して、
抵抗するかのように、
彼との特別な時間を延長させてしまった。
何かが振り切れて、
私は、
私の理性のほんの少しを壊して、
彼の中に入り込もうとする自分の本能を許した。
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