カラオケ

私は大きな行動に出た。



彼をカラオケに誘った。友人付きで。

もちろん、アコギを持ってきてと。


彼は誘いに乗った。


あの日の弾き語りだけでは、私は足りなかった。

彼もそうだった。


時間帯は彼のバイト終わり、夜9時頃だった。


私は彼を迎えに行った。

友人とは現地集合にした。




私は彼を助手席に

後部座席は2つのアコースティックギターを乗せて


車を走らせた。


5分程の道のりを私は偉く長く感じるのかと思ったら、それは意外にもあっという間だった。


ふたりっきりはその時がはじめてだった。







私と彼は友人と現地で会い、店に入った。



彼は声が魅力的だった。

色っぽい、大人な、儚げな。

曲に乗せた声は、やっぱり綺麗だった。


綺麗で、少し緊張気味の、

好きな、声だった。




彼は課題を曲の合間にやっていた。


私の視線が彼のシャーペンを持つ右手と、空いた左手に向いた。


空いた左手は腕を見せていた。



長い指

少し骨の出っ張りを感じさせた指と甲

繊細さを放った腕






男性だ


男性がいる




異性が、いる



隣に、横に倒れたら触れてしまうくらいの距離に、あなたがいる。




ざわざわした。




私は、彼の指から腕までが、もう、どうしようもなく、そうゆう風に見えてしまっていた。







彼は途中、眠くなったと言い、横になった。

彼はフードを被って仮眠した。


私の手は彼の髪に触れられる距離だった。


私は彼に触れたくて、

触れたくて、


でも触れてしまったら






そうゆう、女だと、認めてしまうことになる。


今の関係が崩れることはわかっていた。




冷静になったつもりの私は『女』になった事を隠し、彼の恐ろしい誘惑にそっと身を引いた。











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