アコースティックギター×2

『先輩、学校にアコギ、持ってきてたよ。』

友人から聞いた。



私の脳は安直だ。



謎の嬉しさを感じてしまった。

それもかなりの高揚っぷりだ。


激しい胸の高鳴りは嘘をつけなかった。




アコギは彼との唯一の共通点だった。









気になる、気になる、気になる






彼に、

会って、

私のアコギを見せて、

一緒に弾き語りでもしよう。








『アコースティックギター』

これは彼とつながる唯一の手段。








私は父から借りている(ほぼ私物化している)黒のアコギを学校に持ってきた。



彼はいた。

あの日、3人で語らった場所に。

数人の客を交えて、

彼と私はアコースティックギターを鳴らした。


彼は、胡座をかき、身体は音に乗っていた。

時に彼は歌った。



途中、互いのアコギを交換した。

彼のアコギは、バーガンディだった。

そして、弦高が高いものだった。



弦は固く、そう簡単に弾かせてくれなかった。

彼が貼った壁のように。

彼の内側に辿り着くまでには時間をかける必要がありそうだ。



彼は、私のアコギをとても弾きやすそうにしていた。弦高が低いからだ。弦も柔らかい。

まるで今の私のように。

あなたの何かに惹かれ始めている私。

あなたに心を許してしまおうとしている私。






いや、もう、手遅れだ。


彼はもう私のアコギを弾きこなしていた。







何曲か弾いた。

流石に怒られた。ここは、制作スペース。

やるなら音楽棟でやれと。

残念ながら私と彼は音楽科ではなかった。








ああ、終わってしまう。

いってしまう。

いかないで。


いかないで、

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