第2話 黙る女

「訳が分かんない、何なのよ、あの女」

黄昏れの夕刻。そろそろ陽も沈んで、あたりも暗く落ち着いた気配で、この探偵事務所にも夜の静けさが訪れようとしていた。いつになく淳子がむくれている。今日の客が原因だ。先刻からこの事務所を訪れているのだが、いまだに帰ろうともしないで、待合室でひとりで待っている。俺にはその理由が分かっていたが、淳子は客が美人の若い客だけに俺にヤキモチを妬いている。ライバル意識があるのだろう。俺は気楽に淳子の機嫌を取ろうと69の体位から掛かった。即座に淳子の反応があった。敏感な淳子の秘部がシットリと潤んで湿り気を帯びて来た。俺は興奮してパンツ越しにぺニスが勃起して来たのを自覚していた。

「ははあん、そこ感じちゃう」

思わず、淳子が嬌声を上げた。さらに俺は淳子を舐めて責めてよがらせる。その時、待合室から例の女性の声がして俺は我に返った。

「あのう、もしもお邪魔で無かったら、お話しが少しございまして」

よく通る澄んだ声だった。


女は黙っていた。それが妙に色っぽい。体つきは華奢だが、麦色のワンピースから零れる女の色香はただならない気配を秘めている。

「こんなこと伊丹さんにお願いして笑われないかと」

ついに女は沈黙を破って言葉を次いだ。

「わたし、三和佐和子って言います。つい、一ヶ月程前に主人を交通事故で亡くしまして、今は喪中の身の上ですの。これでもわたくし、都内でヨガスタジオのインストラクターを勤めてましてね、もう仕事も長いんですの。でも今日お伺いしたのは、わたしの病気、心の病気っていうか、それをご相談したくて」


「変態性欲って」

濃厚な接吻のあとで、俺は緩やかに胸元に移動した。白い乳房がシットリと潤んで湿り気を帯びている。いつの間にか汗をかいたのか。指でくびれをなぞっていくと、うんんっと声を上げた。

「変態性欲を治療してくれってわけ? また変な依頼受けるのね」

「でも、本人にしたら、深刻だよ。こんなこと、他に依頼する所がないだろうし」

「で、恭介ちゃん。あのお客さんどうするの、明日も来るんでしょ」

「僕に任せといて、良い手があるんだ」

もう俺はいつものペースで、淳子の身体を後ろから抑え込むように熱く力を込めて羽交い閉めにした。思わず、淳子は不意を突かれて声を上げて許しを乞うた。

「ああん、こんなあ、あたしったら、いやあ」

若い肉体が踊るように揺れて、禁断の悦びに歓喜していた。


「ここで裸に?それでよろしいのですね」

佐和子は軽く了解して、その時着ているワンピースをいとも容易に脱いでいく。下着姿になるとなかなかの肉体の持ち主だ。着痩せするタイプか。それでも下着を取る時には少し躊躇いがあった。

「これで真相が分かるはずだよ」

そう言って俺はいつものペースでゆっくりと構えていた。佐和子は諦めたように下着を脱いでいく。そして佐和子が全裸になったとき、側に居た淳子があっと声を上げて驚いた。

佐和子の異常性欲はすべてそこから来ていた。裸になった佐和子の身体は、全身がみごとに傷だらけで痛々しい程であった。肩も胸元も乳房もすべて傷だらけで、背中や下腹部には強い打撲の跡すらあった。その原因は誰がみても明らかなものであった。


「自傷行為ってわけだよ、彼女の場合。自分ひとりで裸になってあちこちに傷をつけて喜ぶ訳さ。そういう趣味が悪いって悪いとも言えない。そんなの本人の勝手だしね」

まるで猫だ、と俺は淳子のクリトリスの反応をみて真剣に思った。獣のようにあらぬ声を上げて彼女は応えた。さらに熱いストロークはスピードを上げて淳子の全身を貫く。激しい挿入行為の加速。俺は思わず声を漏らす。淳子の腰が震えるとともに俺のぺニスは絶頂を迎えていく。

「だから治療もないってことなのね、彼女、納得行ったのかな」

淳子はやや喘ぎながら声にして俺に答えた。喘ぎ声も可愛い。

「別に病気でもないから、これからはそんなに気にしなくていいって言っておいたよ。それに彼女も僕たちに裸を診られて今までとは気持ちが変わったらしい。前向きに生きていけるそうだ」

ついに俺のストロークが絶頂になった。淳子の女体が大きくうねって俺のぺニスは溢れるほどの勢いで精液をほとばしらせた。淳子が小さく声を上げる。女はそれを受けて歓喜した。

「あの女性、また来ないかな。あのタイプ、従順なM女って感じで俺の好みなんだけどな」

「何よ、それ、やっぱり恭介って変態よね、サディストよね」

世の中、サディストだかマゾヒストだか知らないが、十人十色。それぞれの花ありてこそ、野は楽し、というところか。今日も人の世は過ぎていく。俺と淳子のセクシャルな日々が何とはなく過ぎていくのだ。




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