09 - 僕だってこんなに声張ること滅多にないよ!!
このなんとも言えない好きです感満載のブリブリした喋り方はどうにかならんもんかね…。僕はそういうの嫌いなんだよ。ま、僕に向けられたものじゃないんだけれどさ。
「あ、もしよければこの後食事でもどうですか?」
「すまない、俺は…」
「ウィゼルド、買い物終わったけれどいつまで僕を待たせるつもりだい?」
「今すぐに会計済ませてくる」
「ふふ、急がないでいいよ、欲しい物はちゃんと買わないと…こんばんは、君も買い物か」
「シャシャガル、こんばんは…」
あまりにも可哀想だから助け舟出したけれど、女の子に恨まれるのはまた厄介だから嫌なんだよなぁ…もっと上手く断ってかわしてくれたらいいのに。
「あ、そうだった。魔法銃使えるなら今度ウィゼルドに弾を作ってみようと思うんだけれど、形が分からないんだ」
「ああ、そういえば使えはするが弓ばかりだからな…新調するつもりでいたんだが、今度はそれを見に行くのに付き合ってくれるか?」
「いいよ、とりあえず今ある銃の形教えて、試しに作ってみるから」
「ああ」
教えてもらった銃だったら僕の持っている空の銃弾で大丈夫そうだから新しく買うこともないな。
ウィゼルドも買い物を済ませると店を出る。
「で、晩ごはんどこ行こうか」
「いいのか?」
「嫌とは言ってないだろ」
「じゃあシャロンの行きたい所にしよう」
流石にクルミも帰ったからよかったけれど、晩ごはんは一緒に食べることになった。家で自炊といっても大したもん食べないからいいか。
次の休みいつ合うんだろうか?と悩みながらウィゼルドの為の弾を作っていたら、キーラに呼ばれているのに気付かないで肩を叩かれて飛び上がりそうになった。
「ビックリしたぁ…」
「珍しいわね、ボーッとして…バロンド君来たよ」
「ああ、うん」
今日も2号室を借りているのでキーラと半分ずつスペースを使いながら作業していたんだ。ナージャはトレーニングルームにこもりきっているみたいで一緒じゃない。どうやらちょっとサボっていたらしくて筋力が落ちたって騒いでいた。
「ウィゼルド、トレーニングしてきたんでしょう?髪が濡れている」
「ああ、シノノメと競っていたら凄い汗をかいたのでな、シャワー浴びてきた。すぐにシノノメも来ると思うが」
多分ナージャもシャワー浴びているんだと思う。シャワー中にサイレン鳴ったらどうするんだろうなぁといつも思う。
「あ、昨日言っていた弾作ってくれているのか」
「うん」
「聞いたわよ、昨日デートしてきたんですって?」
「え!?」
「キーラ、デートじゃない…」
「えーでも、やっている事はデートじゃないー」
「君たちと遊びに行った時と変わらないだろう」
なんか感の鋭い彼女たちはウィゼルドが僕を好きなのに気付いてそうやってかまかけてくる。気付かれたら嫌だからやめなって言ってはいるんだけれど。
「デートではないぞ、友人と遊びに行っただけだ」
「ね、そうだよ、キーラ!」
…最近気付いたんだけれど、本人無自覚らしいんだ、僕を好きだっていうの。何で本人より周りが先に気付くんだ…この鈍感め…。
昼食前にサイレンが鳴り、出て行くと銃の弾を持って列に並んでウィゼルドが来るのを待つ。今日はダメと皆断って最後の方にナージャと一緒に走ってきたウィゼルドのキーと交換する。
「強制だよ」
「あ、ああ…いいのか?」
「いいも何も、出来立てホヤホヤ試してくれるんだろう?魔法弾」
「ああ、そうだ!楽しみだな」
魔法弾は上手く作れるガルが少なく、しかも相性が合わないと威力が半減してしまうから使うシャルフも少ない。ナージャとキーラは前から使っているけれど100%の威力は出なかったと言っていた。ルブルしたら出るようになったらしいが。
仕事中に実験みたいになったけれどしっかりと核を壊せる威力は出ているということは80%は超えているだろう。もう少し改良が必要かな。
「凄いな…核壊せる威力出せる…流石シャロンだな、合わせてくれる」
まあその銃をちゃんと扱えるウィゼルドも凄いけれどね。そんなに弾を作れるガルがいないからと皆練習しないんだよね。
昼ごはんを食べ終えてから次のを作ってみる。ウィゼルドの属性とかに合わせてもう少し改良をする為に計算してみたり真剣に作業していた為、サイレンが鳴るまでウィゼルドが部屋に来ていたことも知らなかった。
「シャロン真剣だったわね」
「久々の魔法弾作っているから楽しくなってきちゃってさ」
「ナージャも私が作れるって知って銃練習したからね、私もいっぱい試作品作ったなぁ、楽しいわよね!相手の事考えながら作るのって」
「…それは同感しかねるが、アイテム作りは楽しい」
ガル塔に向かって走りながらそんな話をしていたら着いたら息が上がってしまっていた。
「シャシャガルー!」
「今度は俺と!」
「あーごめんね…きた!ウィゼルド!!」
「え…おわっ!」
キーを投げつけた。それをキャッチしたウィゼルドのキーを奪い取ると一緒に動物塔に向かって戦場に向かっていく。
「俺が連続で大丈夫なのか?」
「別に僕が誰と一緒でも誰にも迷惑かからないからいいんだよ…さあ次の弾だ!」
「ああ、なるほど」
今回もまあまあ良かったが90%は超えないな。これはなかなか悔しいぞ。
「僕、それなりにウィゼルドの事知っているはずだし、計算も合っているはずなんだけれどな…悔しいな…」
「今でも全然合格点以上だがな」
「ちょっと、後でシャルフ塔行くから開けさせて、銃」
「ああ」
アイテム工房での作業でもいいけれどそっちに行くよりまっすぐシャルフ塔の作業スペースに行ったほうが早いし、すぐそばに試し撃ち出来る所もある。
動物塔で動物に挨拶して浄化機にかけ、ランキングもちゃんと1位でそのままウィゼルドを急かしてシャルフ塔に向かう。
「バロンドさぁん、今日も1位おめでとうございますぅ」
「あ、ああ、相棒がシャロンだったからな」
「そういえば今日は2回とも一緒でしたね…って、2人でどこ行くんです?」
「ちょっと作業スペースに」
ウィゼルドがシャルフ塔に入るので僕もキーをかざして中に入るとまっすぐと作業スペースに向かう。早くしないと手入れするシャルフで場所無くなってしまうからね。
場所を取ってウィゼルドが工具取りに行くからと行っている間に簡単に魔法弾を前の2種と新たに1種類用意する。
「あれ、シャシャガルがいる、珍しい」
「魔法弾作れるのか…流石だな」
「意外と僕ってなんでも出来るんだよ」
「いや、全然意外じゃないけれどな」
工具を持ってきてくれたのでササッと開けると中を見てメンテナンスを行い掃除も済ませる。緩んでいる所を見付けたので恐らくそのせいだろう。
「何でシャシャガル、シャルフよりも銃の扱い慣れてるんだよ…」
「凄い腕だし…」
「僕、前にアイテム工房で働いたこともあるからねー皆の武器も有償で掃除とかしてあげてもいいよ」
僕の作業を見ていたシャルフにお金のハンドサイン見せると笑っていた。無事に掃除も終わらせて弾も新しく用意したので全部持ってウィゼルドを引っ張る。
「はい、試し撃ち」
「おお」
シャルフ塔を出て、隣の練習場に行くと何人か見学しにきている中、ウィゼルドに魔法をかけて魔法銃撃ってもらう。
魔法弾計測の威力値を見ることが出来る魔法人形に打ち込む。
「これ最初の弾と同じ」
「今のと変わらないくらいの威力だな」
「次、今のと同じ弾」
それも撃ってもらうと90%を余裕で越したな。やはり緩んでいた所をいじったからだね。
「最後にこれ、今また新しく作ってみたやつ」
「うむ」
シンクロ率100%になると魔法弾の威力は大型魔物を3体撃ち抜けるくらいの威力だという。実際に僕は見たことがない。
魔法人形に表示された威力値は99%。
「うん、満足」
「シャロン…凄いなこれは…」
「100%は行かなかったけれどね…新調するならばそれに合わせないとね」
自分にも作れというシャルフ全員無視して練習場を出る。アイテムの研究の続きをこれでやっと出来るからね。
とりあえずガル塔に逃げ込んだ。
「シャロン、どこに行っていたの?」
「ウィゼルドの銃をいじくり回して試し撃ちで99%出したんだ」
「えええそんなに?凄いのね…もう貴方達ルブルしてしまいなさいよ」
「僕がそういうの興味ないって知ってるくせに」
飲み物を用意してもらい相変わらず2号室に向かうとナージャとウィゼルドが部屋の前で足抱えて座り込んでいた。
「いや、何してんの?」
「シャロン来るのおそいんだよー私待ってたのにー」
「来たらシノノメがいたから一緒に待っていた」
「今開けるから…あと、キーラが飲み物とか全部持ってきてくれるから後からくるよ」
僕が借りている部屋だから僕のキーじゃないと開かないから2人は入れなかったんだ。開けると中に入って我が物顔でくつろぐシャルフ2人組。
「聞いたぞ、シャロン!99%出したんだってね、銃」
「うん、周りが自分にも作れって五月蝿いんだ、黙らせて欲しい」
「それは、寮長に言っておくよ…それより、アンタ達ルブルもう組んじゃいなよ!」
「さっきキーラにも言われたんだけれど、僕は興味ないんだってば」
「ルブルはそんなに簡単に決めるわけにはいかないからな…」
「君達みたいに仲の良い二人ならまだしも…ルブルなんか大変だし嫌だね」
「…え…」
ウィゼルドよ…なんでちょっと寂しそうな顔でこっち見てくるんだ?
僕は誰にも縛られないで生涯1人で生きていく為今頑張ってお金を貯めていてだね…ルブルなんかして相棒に振り回されたくないわけで。
「俺達は…仲良くないか…?」
「あ、そこ?」
「シャロンとは、仲良くなれたと俺は思っていたんだが…俺だけか…」
「ううん、違う、違うよ!仲良い!凄く仲良いと僕も思うよ!ねえナージャ!!」
「ああ、どう見てもお前らカップルだろ」
「はあ!?なななに言って?ナージャ!?」
「おお、珍しくシャロンが取り乱している、キーラにも見せたかったな」
「カップルではないぞ」
「真面目だなおい…仲良くデートしてきたならそう疑われても仕方ないでしょうって」
「だから、デートじゃないってばああ」
なんで僕がこんなに慌てないといけないの?別にやましいことしてる訳でも無いしこんなに取り乱すこともないな…と大きく深呼吸をしていると、キーラも来たみたいでナージャが開けて入れてくれている。
「シャロンは何しているの?」
「ああ、バロンドとの仲を言い当てられて慌てているんだ」
「はあ!?だから違うってばあ!!」
「まあ、シャロンがこんな声張っているの初めて見たわ」
「俺もだ」
だから、なんで僕はこんな…弄られているんだ?弄りなれているけれど、弄られ慣れてないんだよ。
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