02 - 新しい職場は今までと規模が違う!




 新しい職場にはシャルフ塔とガル塔がる。まあ要は寮なんだけれど。

 敷地の奥には司令塔、その手前にシャルフ塔、その手前にガル塔、そして入口付近には動物塔がある。騎士団の詰所や一般兵の寮とかもあるから敷地はとても広い。

 司令塔で挨拶を済ませ、事務員のお姉さんに案内してもらいガル塔を見せてもらった。


「個人部屋にならないです?」

「男性ガルが今5人なので相部屋に入ってもらう事になるね」

「じゃあ敷地外で」

「相部屋嫌なタイプ?」

「うん、他人と一緒とかどうしていいか分からなくて…村出身で慣れてないんだ…」

「じゃあ外寮アパートの場所後で教えるね、荷物もそっちに運ぶように再手配しないとだね、すぐ連絡しに行かないとだから、1回司令塔戻るね」

「あ、やってくれるんですか?ありがとうございます」


 ガル塔の案内はまた次回にしてもらい、配達員さんに連絡をとってもらってアパートに案内してもらった。敷地外で家族と暮らしていたりする人もいればこうやって敷地外の有料で借りれる寮もあるって聞いていたからここにしたんだよね。


「このアパートの2階角部屋だよ」

「うん、ありがとうございます」

「明日9時半頃に、また司令塔に来て」


 荷物もしっかりと運んでくれていたのはありがたい。まあ2箱だけなんだけどね、僕の荷物。部屋の鍵も貰ったことだし、中に入るとワンルームだけれど家具付きだったのはありがたい。


 翌日司令塔に行くとガル塔の案内の続きに登録手続きにシャルフ塔には行かず動物塔に詰所などを案内してもらう。それから図書館。


「ここでは古代文字の解読や、文献の開錠や暗号解読など行ってもらっています」

「なるほど、流石にここまで大きな所だとそういう仕事もあるんですね」

「はい、隣の建物は研究所。薬草栽培しているからそこから薬草を買ったりその施設内で薬作ったりも可能です。隣の建物には工房が入っているのでアイテム作成や魔法道具研究なども出来たり、装備のメンテナイス出来ます」

「設備とかも整っているのならアイテム作成も出来るしありがたい」

「出勤日以外でも使って構いませんから」


 部屋でやらないで済むのはとてもありがたい。

 それからここでの仕事の大まかな内容を聞き、翌日から仕事を始めることになった。

 ガルには立派な制服はないけれど、ローブっていう決まりはある。まあ僕はAランクなので好きなの着れるんだけれどね。

Bランクまでのガルは能力が低く心配という意味もあり防御力の高いローブを着ないといけない決まりになっている。前の仕事は制服あったけれどね、騎士とか魔法使いも一緒の隊服が。


仕事初日っていうのもありローブも持ってきたけれど、羽織ってみたけれど暑くて嫌だった。だって今夏だよ…。皆夏用ローブだからいいけれど、僕の普通のローブだから通気悪いんだよね。

事務員さんと朝礼へと向かうと皆の前で挨拶しないといけないので一応ローブ羽織っておく。


「リーム領の騎士団から来たエ・シャロン・シャシャ君だ、Aランクガルだがここのシステムにはまだ不慣れなのでシャルフには新人教育を頼む」


 挨拶を終えてガルの列の最後尾に並ぶと朝礼をなんとなぁく聞く。まあ今日は選ばれる事はないだろうし、どういう人たちがいるのかとか見ておかないとな。

 朝礼も終わって、巡回仕事や派遣で飛んでいく仕事のシャルフとガル以外は敷地内で各々自由に仕事をして過ごせる。


「えっと、シャシャさん」

「はい」

「寮長のキーラ・エルンドーです」

「エ・シャロン・シャシャです、よろしくお願いします」

「ええ、よろしくお願いします」


 声をかけて来たのはワインレッドの髪をポニーテールにして少しつり目気味の美女だ。僕でも一応美女かそうじゃないかくらいは分かる、つもり。女性にも男性にも興味はないけれど。

 ローブを着ていないところを見るとAランクだな。


「貴方はアパート暮らしのようですね」

「はい、エ族の村出身で共同生活に慣れていないので迷惑もかけそうだしね…」

「そういう事でしたか、まあ待機の時は食堂の階までは自由に使えますのでキーを使って入って下さい」

「うん、そうします」

「何か困ったことがあったら私か司令塔の事務員さんに言って下さいませ」

「じゃあ早速いいかな?」

「はい」

「待機時間にすること、教えてもらえるとありがたい」

「でしたら、案内する所だったので、ついでに仕事見学に行きませんか?」


 キーラが案内してくれたのはまずは研究所の奥にあるアイテム工房。ここではシャルフやガルが仕事で使う物を作ったり出来る工房があるって言っていたな。


「ここで頼まれたものを作るのですが、新人含め、Bランクガルまではシフトで決まっているのでその内回ってくると思いますが、アイテム作成の能力は?」

「ああ、工房で2年程働いたこともあるのでそれなりには」

「まあ、それはとても頼もしいです、多分すぐにシフトからは外れると思いますが…直接制作依頼とか来そうですね」

「断れるの?」

「ええ、事務の方に聞きましたが、シャシャさんはAランクですからね」

「薬師とアイテム併設で、どちらもやっていたので大体はレシピなくても作れると思いますよ」

「本職だっただけあって、流石です」


 それから図書館で解読や開錠の仕事。何人かのガルが既に仕事を始めている。

 机に向かって解読している子もいれば鍵の掛かった書物の開錠を試みている子もいる。


「魔力開錠の経験は?」

「学校で習った程度ですね…」

「でしたら一度こちらの練習用の本を開錠してみませんか?」


 言われて連れてこられたテーブルの上には5冊の本が並んでいる。


「白から順に開けていって下さい」


 学校でも使った練習用の本だ。白から黄色、緑、青、赤、黒厳重になっていく。勿論ガルの仕事は黒以上に厳重に鍵が掛かっている書物との戦いだけれどね。

 順番に息をするように解除魔法を唱えてテンポよく黒まで開ける。


「まあ…」

「練習用は簡単な魔法だけですからね」

「それにしても速いですね…ではこちらへ…」


 そういってさっき開錠を試みている子の所に向かった。そしてその子にキーラが何か話して退いてもらっている。


「シャシャさん、こちらを少し触ってもらえませんか?なかなか開かなくて最近開錠の仕事も滞ってしまっているのです」

「なるほど」


 僕で開けれるか分からないけれど本を渡されて表紙、裏表紙に背表紙とぐるっと回して色んな方向から見てみる。


「3日程掛かってもなかなか誰も開けられなくて…何かしらきっかけでも掴めればなんとかなりそうなのに…」

「うん、やってみよう」


 錠の掛かり方把握できたからどの程度の魔力量で捲るか。

 見た限り鍵穴なんてものは見当たらない、これは箱に詰められラッピングされている状態だ。さっきからこの子が魔法での開錠を試みていたのは全く見当違いだ。


「ここかな…」


 指先に魔力を溜めてラッピングを破るかのように魔法の包を破って開けると箱の開錠に移る。ここは錠が付いているのでそれを開錠し、箱を破る。本本体にもラッピングされているので更に強い魔力でそれを破り捨てると最後の錠を開ける。


「開いた…」

「はい、開きましたね」

「開きましたね…」


 僕の錠破りの腕もまだまだ衰えてないな。久々にやったけれどちゃんと開けれたもんね。

 とても感謝されたのでよかった。暗号解読の仕事も少し見させてもらってから、今度は魔法砲台の方に案内してもらう。


「見ての通りの場所です」

「うん、ざっくりしていていいね…ここではメンテナンスもするのかな?」

「ええ、最終的にはガルが魔法を込めるので本体の整備をしてもらってから最終チェックだけします」

「なるほどね、ここは使いたくないね」

「ええ、そうですね…使うイコールシャルフ達が魔物を討ち損じて町に入ってきてしまった時ですからね」

「外周にも砲台あるんでしょう?」

「ええ、そちらは私達の管轄とは違うので滅多に行きませんが、たまに派遣されます」


 他にも雑務の話も聞いたりしていると警報が鳴り出した。これは出撃合図。


「シャシャさん、いきますよ」

「はい」


 シャルフが支度を整えるとガルを選びにくる。その為僕達ガルはガル塔の前に立って待たないといけない。

 列に並んですぐにシャルフも装備を整えてシャルフ塔から出てくると徐々に呼ばれていくガル。


「キーラ、今日もお願いね」

「ええ、ご一緒いたします」


 女性シャルフとバディを良く組んでいるんだろう、シャルフが来るとすぐに呼ばれてキーラと一緒に動物塔に向かった。


「新人ガル、俺が今日の新人教育担当だ」


 そう言うシャルフは嫌そうだな。


「えっと、よろしくお願いします?」

「なんで疑問形なんだよ」

「いや、とても嫌そうな顔をしているから」

「嫌だよ、ランク上がんないもんな」


 ランクとは魔物の討伐数ランクが毎回出るからそれのことだ。昇進に関わるから皆ランク上位を目指している。

 自分のキーを差し出すとシャルフのキーと交換する。そのキーを司令塔で支給されたばかりの腕時計型の機械に差し込む。これでキーの持ち主の戦歴や属性などステータスが見れるようになる。


「グフト・ラナーズ…7位…全体12組くらい出て7位あたりなのですね、いつも」

「そうだよ…だからせめてそれより下がりたくないの」

「なるほど…では5位以内を目指しましょう」

「は?」

「急ぎましょう」

「ちょっと…」


 動物塔に向かうと今日は陸と出ていたので馬や地上での戦闘用の動物が支度して待っている。


「愛馬はリック…初めまして、シャロンです…今日からここで働くのでお世話になります」


 そう言いながらリックを撫でているとシャルフに「変な奴」と言われた。どこをどう見て変な奴だなんて思ったんだろうか?心外だけれど無視して後ろに乗る。

 後ろに乗って彼の属性やら魔法の相性ランクを見たりグラフを見たりと能力を確認する。


「武器の重量操作はしますか?」

「出来るの?」

「出来なかったら言いません」

「まあ、そうだよな…出来るガル少ないからな、助かる」


 能力とか見る限りそんなに弱い人じゃないから重さの問題っていうのもあるからね。


「ランスでいいですか?」

「ああ」


 馬の横に装備されているランスを外して重量を上げてから渡す。


「どうです?もう少し増したほうがいい?軽い方がいい?」

「おお?しっくりくるな…これでいい!」

「じゃあ魔法を付けていきます」


 能力向上魔法をかけていくと終わった頃に接敵し、戦闘が始める。魔物の量は多分100近い大群だ。12組みのルバディが出ているが1時間以上は掛かる戦闘になるだろう。

 ちなみにルバディとは普通に組むバディの事。今僕はこのシャルフとルバディを組んで仕事しているってことね。


「魔法攻撃、相殺」

「は?」

「左物理弾く」

「ま」

「地中からの魔法、リックジャンプ!」

「おい?」

「…なんですか…仕事して下さい」

「いや、お前凄いな…」

「普通かと…」

「的確な感知に魔法、それに状況判断能力…」

「いや、一応Aランクなので…これくらいは普通かと」

「だって、Aランクは名ばかりの奴だったり」

「ガル協会認定です」

「なるほどな!」


 やはり1時間以上の戦闘が行われ、やっと全滅させた。

 シャルフが浄化の機械に腕時計をかざしてランキングが出るのを待つ。



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