第8話 私はヤられる前に国王様をヤル。

「待つのだ!! アリシアよ!」


 そんな中、アリシアを止めたのは、観客たちの中で豪華な衣装を身につけた男だった。アリシアは首をかしげて


「はい? なんでしょうか、国王様?」


 皆が恐怖におびえる中、我が身を犠牲にして守ろうと、国王は勇気を振り絞りアリシアの前に出たのだ。フルボックは、父のその行動に感動し、尊敬の念をいだいた。さすが、我が父だと、誇らしく思えた。だが、


「アリシアよ、お主の目的はもうすんだのではないか。そこに転がる売女ばいたと愚息がでっちあげた罪の冤罪ははれたのであろう、そこの愚息と愚か者どもは、お主の好きにすればよい。これで終わりでよいな」


 フルボックは信じられなかった。父が愛しの女性を売女と非難し、自分のことを愚息と言い、切り捨てたのだ。フルボックは絶望した。自分が登っている階段が崩れ落ちていく幻が見えた。


 フルボックは自分に制裁を行うであろう、アリシアを見た。アリシアは先ほどまで気持ちのいいほど喜んでいたはずだったが、困惑した表情を浮かべていた。そして、アリシアは何かをはっ! と気づいて


「そういえば、そうでした、わたし、罪に問われていたんですね。ヤることに夢中で忘れてました。てへ、ヤっちゃいましたね」


 茶目っ気を出して答えるアリシアに恐怖はあるが、アリシアと同じように国王も笑顔を作る。国王はこれでひとまず、解決したと安心した。


 自分たちは助かるが、愚息達は犠牲になるだろう。まだ第一王子と第三王子がいる。支障はないなと、ことが終わったら騎士団をひきいて、伯爵家ともどもアリシアを始末にしてくれる。他国の来賓にたいして、謝罪しなければならない。金銭的にもかなりかかることは間違いないだろう。痛い出費になってしまったな。


 王はその後のことを考えていた、だが、


「でも、今はもう、どうでもいいんです。そうそう、私は聞きましたよね? 皆さんにヤっちゃってもいいんですよね? って、わたしは皆さんに『ヤります』を高らかに宣言しましたよ? 皆さん誰も反論しなかったじゃないですか。肯定ですよね、だから約束通り、私、ヤりますよ?」


 アリシアの言葉に王は焦りを隠さないでいた。思わず「えっ」と声をだしてしまいそうになった。アリシアの足は王の方へとニコニコしながら歩み寄っていく。その恐怖ははかりしれない。


「観客の皆さんを、誰からヤろうか、迷っていたんです。1号決定ですね」


 国王は動けない。

 ありえないほどの汗が出てくる。

 嘘だ、自分はここで死ぬのか。

 もう汗どころではない失禁までしている。赤い絨毯がそれらのものでシミになっている。震えが止まらない。


 ふぇ?


 視界が暗転する。


 絨毯しか見えない。なんだこの匂いは、汚物のような匂いがする。どうしてだ、どうしてだ。

 

 国王の身体には頭部がなかった。切り口から噴水のように血が噴射する。国王の首もササレタのように地面に転がった。

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