第6話 私はヤられる前に拷問をヤる
「こんな感じで、本当に困ったことに先輩の中にはヤル数を争うだけの血の気の多い方が多いんです、わたしはダメだと思うんですよね。何事にも演出、イベントが必要だと思いませんか?」
今この場で行った戦略級大魔法によって、大量虐殺を行ったアリシアは気にも留めず会場内の人に向けて賛同を得るように語りだした。
「そういえば、そうですね。私がヤった証拠もありませんし、うふ、これは、これは困りましたね」
たとえアリシアがしていないと皆に言い聞かせても、証明になるものはない。ねつ造の書類、数での暴力、扇動すればヤったもの勝ち。証拠がなければこの状況をくつがえすことは難しい。
だがそれよりも、アリシアがあの大規模な戦略級魔法を無詠唱で発動させた事の方が、皆して信じられない状況になっていた。だけど、この場で発動させたのは彼女としか思えない、今の彼らはただ沈黙し状況を見守るだけだった。
フルボックは、震えながらも自らを鼓舞させてアリシアの言葉に返答する。
「や、やはり、お前が、ヤったのだろう? さきほどからデタラメばかり言いおって」
「そうです、さっそくですが、アレをヤりましょう」
フルボックが目蓋を閉じた一瞬だった。
自分の側に、たしかに、いたはずの、ナーシャが、いない。
「いやああああ、いだい、いだいいいいい、いだあああい、いやあああああああああああ!!」
離れた場所にいたアリシアの側にナーシャがいた。自身に寄り添っていた彼女が、なぜ、そこにいるのか、分からない。いつの間にかアリシアの右手には包丁のようなものが握られていた。ナーシャの右耳がポトっと落ちる。そこから血がぼたぼたと落ちていく。ナーシャは、首根っこの部分をアリシアに後ろから抑えられていた。身をひねりながら必死にこの場から逃れようとするが、びくともしない。あの細い腕にどれだけの腕力がこめられているのか分からない。ナーシャは泣き叫び錯乱していた。
「はーい、これより拷問開始でーす。心配しなくてもいいですよ、わたしは牢の門番の兵士のような、きったない白いモノでドロドロヤったりする汚いイベントはしませんから、スパーッとこれで優しくヤってあげますからね」
号泣するナーシャをアリシアは、まるで、子供に言い聞かせるような、優しい瞳で笑いかけていたのだった。
「さぁ、あなたが、私にヤろうとした事を全て白状してくれませんかねぇ~♪」
フルボック達は今何が起こっているのか理解できない。そんな中、ナーシャはアリシアに囚われ、ナーシャの顔が恐怖に歪んでいた。
狂ってるといいようがないほど、アリシアは穏やかなのだ。自分を罠にはめた人間に対して怒りを表すどころか喜んでいるのだ。
もはやナーシャは、か弱いお嬢様を演じる余裕さえなくなっていったのだ。近くに転がってるササレタの首が、ナーシャの視線にはいったことで決壊してしまう。
「おねがいします。ころさないで、ゆるして!!、ゆるして、ごめんなさい! ごめんなさい、わたし!!、わたし!、だから、だから!!」
ナーシャはもうなにを言ってるのか自分でも分からない。ここから解放して欲しい、許してほしい。逃げたい、ここから離れたいと必死だった。この狂った化け物から、逃げたかったのだ。
転がったササレタの首、自分の耳が斬られたことによる痛みと恐怖があわさって、まともな言葉を話すことさえできない状態だった。そんなナーシャにアリシアは困った顔して、
「失望しました、この程度のことをヤられたぐらいで、ハヤク答えてくださいよ? ねぇ、お仕置きしますよ?」
アリシアはナーシャの右手首をバッサリと斬った。
「ひっ!!!!!? いやゃあいいいいいいいいいいいいいいいいゃああああ!!!?!!?!!!」
ナーシャは喉の奥底から叫び出すような大声で絶叫した。包丁で斬られた切断部分からおびただしい血の量がたえまなく流れていった。ナーシャは必死に止血しようと先のない腕を掴んでいた。恐怖と緊張により脳内麻薬が大量に分泌されていたこともあって気を失い逃げることさえ敵わない。ふらつき、その場で座り込んでしまう。同時にアリシアはナーシャを突き放した。地面に勢いよく転がるナーシャ。
身体があつい、痛い、熱い、痛い、痛い、熱い、身体の感覚、すべてがそれらに犯されているかのように、死、死、死ぬ。言葉にならない信号が送られてくる。ナーシャは狂いそうだった。
「さぁ、ナーシャさま、次のお仕置きが、待ってますよ。次はどこをヤってほしいですか」
アリシアは可愛らしい素振りをしながら包丁を両手でもち、ナーシャを斬りつけたそうに見ている。うっすら笑みを浮かべながら…………
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