第7話 正体
ーユーカ視点ー
あの人は一体何者なの?何が一体あの人にあったの?
ドアを開けて部屋を出て廊下を歩いているとゼレンさんに会った。
「あっ、ソーマ君が連れてる子じゃん。あれ、そういえば名前は?」
「ユーカと言います。その…聞きたいことがあるのですが…。」
「ん、僕の答えられることならいいよー。」
「…ソーマさんは一体何者なんですか?」
「…あれ、教えてもらえなかったの?」
「…ええ。」
「…それなら話せないな。」
「えっ、そのお願いします。」
「今更だけど、ユーカさんって何者?」
「私は彼に命を二回救われて、いや拾われて、あと私の家族が魔物に襲われて亡くなったときに浄化の呪文をつかっていただきました。それでその…彼のために生きたいなと、命の恩人ですから。」
つい最近のことを自分の口で話しているうちにフラッシュバックがおきたが堪えた。
「…そうか。それじゃあ、彼のことを命をかけて見守ってくれると言えるかい?」
何故かその時ゼノンさんのまとう空気が変わった。
何か強いような硬いようなものに。
私はそれでも臆さず言う。
「ええ。彼のことを守ります。」
「…そうか。」
空気が元に戻る。
「まぁ、どうせいつかはわかることだ。話しておこう。ソーマ君は1歳ごろ、道端に親に捨てられて僕が保護したんだ。そして、親代わりとして育てた。彼は成長して強くなった。冒険者となり、最強格のSランクまでなり、彼女もでき、勇者パに招待された。…だが、彼は勇者に追放された、理由は知らない。そしてソーマがこの街に戻ってきたときには彼女は他の男とくっついてしまった。…そのように、辛いことが積み重なったせいで、彼は一時自殺を試みた。一命は取り留めたが、彼は…感情を失ってしまった。彼が今苦しみ続けているのは間違いないが、いつ酷くなり命を絶つか分からない。…話は長くなってしまったが、彼のことを見守ってやってくれ。」
ゼノンさんはそう言い残し、奥に行ってしまう。
私はしばらくそこに立ち尽くし、軽く頬を叩いて、部屋に戻った。
私は気付かなかった、ゼノンさんがまだ角のところにいて、何か呟いているのを。
「…彼女は何故あれほど似ているんだ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます