活動再開
何事もなかったように学校は夏休みを終え、二学期が始まった。もう、後ろの席からのあの柔らかで透き通る声は聴くことはない。一度でいいから彼女との恋人としての学校生活を送りたかった。
日が経過とともに彼女の死は新たに迫ってくるものによって人々の隅に追いやられた。秋にかけて修学旅行やテスト、クラスマッチ、文化祭などこの先の出来事は過去の出来事から目を奪う。またそれらも同様に過去になれば自然と隅に追いやられてしまう。人は勝手に未来に向けて進んでしまう生き物なのだろう。僕は人ではなかった。
文化祭も近くなり、映画制作部として出し物を検討しようと部員に集まってもらった。あの夏、五十人ばかりいた部員はたったの十人になっていた。三年生が抜けたとはいえ、半数以上の一、二年生はやめてしまったらしい。かろうじて初期メンバーの湊や美波、一年生の茜も残っていたのでその四人でうまく部をまとめていくことになったのだが、現実はそう甘くはなかった。文化祭を目前にして何一つ出し物は決まらず、部を離れる人を止めることもできず、部員は初期メンバーの四人だけになってしまった。
「もうこの部活、終わりにしないか。つばめさんには悪いけど俺たちにはつばめさんのようなカリスマ性はねぇ」
湊が僕たち三人の前で誰もが思いながらいえずにいた言葉を口にした。三人とも何も反論はせず、つばめの功績は秋風に吹かれて落ちていった。
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