旧友との再会
「もしかして、憶えてない?」
彼は僕に更なる謎を投げてきた。どんだけ彼の顔を見ても全く思い当たる節は無い。
「え、大ちゃん、俺だよ、
その瞬間、色々と頭の中にあった靄が晴れて行った。小五の夏、友達の友達みたいな間柄でよく遊んでいた友達がいた。それから暫くしてその友達は遊びに来なくなり、その後、風の便りで遠くの街に引っ越したと聞いた。その友達の名前は確か瀬戸 湊だったような気がする。
「小五の夏に一緒に海に行ったよね?」
「そうそう、憶えてた?」
「憶えてるよ、急に引っ越しって聞いてもっと仲良くなりたかったって落ち込んだ記憶があるよ。でも、よく僕のこと憶えてたね」
「いやぁ、何か大ちゃんの自己紹介を聞いていたら急に思い出したんだよ」
「不思議だね」
自由時間が終わるまでの間、僕と湊は小学校時代の懐かしい思い出話をしたり中学の頃や今のことなどを話したりした。湊は中学2年でまたこの辺りに引っ越してきて、この高校に進学したようだ。幸運なことにどの部活にも所属していないらしい。
「湊って映画よく見る?」
「映画かぁ、たまに見たりするぐらいかな」
「もしさぁ、良かったら一緒に映画同好会に入らない?」
「映画同好会?そんな同好会があるの?」
「まだ無いんだけど、そのなんて言うのかなぁ」
「人が足りないの?」
「うん、そんなところ」
「別に俺はいいよ、入っても」
「本当?今日から活動あるけど大丈夫?」
「大丈夫だよ」
「やったぁ」
映画同好会は会員三人となった。一人加入の知らせは自由時間終了後に会長の高梨さんに伝えた。高梨さんも一人の勧誘に成功したらしくあっという間に同好会員は四人になった。順調に行けば来週の内にも同好会結成の届けを学校側に提出できる。物事が単純に進み過ぎていて不安になるほどだった。
放課後となり、二年五組の教室には会員の四人が全員集合した。
「じゃあ、みんな揃ったところだからさぁ、自己紹介やらない?正直、あまり知らない人と活動するわけだから一人一人のことを少しでも知っておいた方が楽しく活動できると思うからさ」
高梨さんを除く三人は違いの顔を見合って、高梨さんの提案に納得した。
「それじゃあ、私から。五組の高梨 つばめです。順番は時計回りで」
「次は俺かぁ、同じく五組の瀬戸 湊です」
「えっと、三組の
「五組の高尾 大輔です」
「自己紹介も済んだからこの同好会について話すね」
淡々と同好会の概要が3人に語られた。彼女がこの同好会で自主制作の映画を作りたいこと、日々の活動でやりたいことなど彼女の思いを三人で受け止め、それを四人の道標として作り上げていった。できた道標の指す先は丈の高い木々や草が繁茂している。その先に待つあの輝かしい光までの道を残りの二年間でどう作るのかは全く不透明。だか、彼女の言葉や行動はそれの霞を晴らしてくれるような気がした。
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