同好会結成

「同じクラスだね」


 新しいクラスとなり、自己紹介を終えた僕たちに小一時間の自由時間が与えられた。仲の良い者同士で集まる者、その輪がなく新たな友達作りに奔走する者、クラス内の現在の交友関係を把握しようと目線をクラス中に配る者、勉学に勤しむ者、様々な者がいる教室。その中で高梨さんは自由時間の開始と共に僕に話しかけてきた。


「一緒だって気づかなかった」

「私も」

「これからよろしく」

「大輔って言うんだね、大輔って呼んでもいい?」

「別に僕は構わないよ」

「それじゃあ、私のこともつばめって呼ぶ?」

「いや、いいよ僕は、高梨さんで」

「何か壁感じない?」

「まぁ、追々変わるかも」


 意外と話してみると気さくで会話も弾む。僕は彼女にどのようなレッテルを張っていたのだろうか。自己中心的、強引、変わり者その辺だろうか。相手のことをよく知らず、誤った先入観に囚われていた自分が恥ずかしくなった。


「大輔、もしよかったら映画同好会作らない?」

「映画同好会?」

「そう、映画を撮るにしても学校側からの支援が欲しいなぁって思ってさぁ」

「いいけど、うちの学校で同好会作るのって簡単なの?」

「まぁ、人数集めたり、顧問の先生を見つけたりしないといけないけど」

「何人で同好会は作れるの?」

「五人、かな」

「それで、現在の人数は?」

「私と大輔の二人だけ」

「目星の人は?」

「……」

「先生は?」

「……」


 僕は唖然とした、彼女の行動力に。僕ならもう諦めている。残された時間は二年間。映画を撮るまでに卒業を迎えそうだ。


「だからさぁ、今日から一緒に同好会員と先生探しを手伝ってくれない?」

「いいよ、別に用事なんて無いから」

「やったぁ、じゃあ放課後に教室集合ね」


 そう言って彼女は僕の元を離れ、友達であろう一つのグループの中に入って行った。友達の少ない僕は1人となった。彼女は加わったグループの中でも中心的な位置にいるみたいだ。まるで僕とは違う。光り輝いている。


「大ちゃん?」


 不意に懐かしい自分の呼び名を呼ばれて少し驚きながら声のした方に体を向ける。そこには初めましての男子の顔の顔があった。何故、彼が僕の小学校時代の呼び名を知っているのか、何故、初対面でこんなに馴れ馴れしいのかと彼に対して疑問、不審をこの刹那で抱いた。


「もしかして、憶えてない?」

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