3-12:ごっこはごっこ
1連の事件は一族の恥であるクロエ・アラスタルが引き起こしたものだった。
クロエ・アラスタルはアラスタル家の次女に当たる人間なのだが、魔術の才能が全くなかった。そのため、アラスタル家で隠蔽された人間だったわけだ。
そのクロエ・アラスタルは恋をする。エル・ミーシアという1人の少年に。そしてエルもクロエのことを愛していた。
だが、エルには許嫁がいた。
それはクロエの姉であるアリス・アラスタルだ。
メルがクロエのことを信頼していたのは同じ待遇だったというところに尽きるだろう。そして現に、行方不明としてミーシア家と離別することに成功している。
メルは俺が好きだった訳ではなく、クロエが憎んでいたアリスさんとエリアさんを殺した
もっと殺しても良かったが、潮時だったらしい。俺が事件のことを嗅ぎ回っていたから。
───だからクロエは天才泥棒なんていう肩書きで俺の前に現れた。
悠久の宝石なんてどうでもよかったが、そこはキャラ付けらしい。
「だからね、僕たちの幸せを邪魔しないでくれるかな?」
エルさんは、そう言った。
「なぜアリスさんの格好をしてるんですか?クロエさん」
「融通が色々と聞くんだよ」
───ッ、まるで人を道具としか思っていない態度。
だから泥棒、か。
アリスさんから許嫁を『奪って』存在自体も変装して『奪う』。
「君じゃあ僕たちには勝てない」
はは、とエルさんは笑った。
ざくり
と、エルさんの腹から刃物が覗く。
「クロエってもしかして私が捕まえた子ー?」
刃の主はアリス・アラスタルの変装をしたイリアスだった。
───『だめっちにちょーーーーーっと手伝って貰いたかっただけなんだからねっ!』
「なん、で」エルさんが悶える。
「いっやーこんな上手くいくとは思いませんでしたなー。《貴族殺し》なんて異名はどこえやら。色んな貴族に入れ替わって内部から殺す殺人犯でしょー?もう拘束してあるそこのメルちゃそもいつからメル・ミーシアなのかなー?」
「最初から知ってたの?俺を使って犯人あてをさせて総取りってこと?」
「そー言われると人聞き悪いけどねー」
《死喰い》デッドイート。
笑っていた。
楽しく、
食卓で笑う時のような、
美味しそうな顔で。
「でもー薄々気づいてたんでしょー。あんな屋敷で手伝って欲しいことってなにさ、だからちゃーんと犯人あてしたんでしょっ!」
そうだ。俺は探偵ごっこを楽しんでいただけだった。
アリスさんは無理にしてもエリアさんは殺されずに済んだはずだ。
全く俺ってほんとにつくづくどこまで行ってもどこで何をしようと───
「モブおじなんだなあ」
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