2-4:モブおじはチートを使うようです。
決闘しろ、なんていう大見得を切ったは良いものの、この国最強と言われている男とどう戦うかなんて分からなかった。王の言うことに従って、その後からプリンを救出することの方が可能性的には高いのではないか?
いや、そうでも無いか。
現に俺たちが城に忍び込んだことを分かっていたわけだし。
というわけで、どうやって王を倒すかを宿の卓を4人で囲みながら話していた。
「決闘、ということは1体1ということですよね。戦闘スキルはダメ兄まだ全然ないじゃないですか」
「決闘とかじゃなく、俺たちと戦え!みたいな感じで良かったんじゃねぇのか?」
「私もそう思うけど・・・」
あれ?話し合いは?
どちらかと言うと俺がただ糾弾されてるだけじゃね?
「それよりもダメオ、なんでお前あんな風に青ざめてたんだ?確かにオレ達だって怒ってたけどよ、お前はその比じゃなかったぞ。
あ、メイから聞いてたけどお前異世界から来てたんだっけ、こっちでは近親相姦って結構普通なんだぜ?その方が血が濃くなって子供の魔力の質が高まるからな、他国との戦争で前線を切ってるやつの6、7割はそういう家計だぜ」
「いや、そうじゃなくて。あれはは───私情だよ」
そう、ただの私情。
普通か普通じゃないか、とかじゃない。良い悪いとかの問題でもない。それらの問題なんてものは正直心底どうでもいい。
ただ───許容できるか出来ないか
そういう、問題。
と、ここで。
こんこん、と部屋の扉がノックされる。
なんだよ、こちとら王様とやり合う作戦会議、及び俺の反省会を開いていたところなのに。なんてことを考えながら扉を開く。
「どうもっ!えーっと、ダメオさんであってます?!私は王様の使いとしてきたいーたんでーすっ!よろしくぅっ!!」
扉を閉めた。
がちゃん、と無言で。
いやいや、待ってくれ。キャラが濃すぎる。正直あの王様の何全倍も濃いキャラしてるぞ。
くりくりとしたピンク色の大きい目、髪の毛もピンク色のロング。
美少女だった。
「なんでですか開けてくださいよぅ」
扉越しに篭った声が聞こえる。
王様とやり合う作戦会議、及び俺の反省会はお開きだ。
俺はやっぱり美少女に甘いらしい。
モブおじだからかなあ。
扉を再び開ける。
「それで、なんの用?えっと、いーたん?だっけ」
「はいっ!いーたんですっ!王様に言われてきました!例の決闘の件、明日だそうですっ!」
「「「「明日!?」」」」
俺たちが口を揃えて驚く。
だって時間が無さすぎる。
「?、まあっ、そういうことなので!よろしくお願いしますっ!あと、王様から伝言ですっ!「勝つためならなんでもしていいぞ、それを無駄な足掻きと学習しろ」だそうです!それではー!」
それだけ伝えて、いーたんは去っていった。
にしても、王からの伝言がウザすぎる。
軽くぶっ飛ばしたい。
「今の人、誰ですか?」
と、クロネが聞いてくる。嫉妬と言うやつか?
「あの人、只者じゃないですよ」
どうやら俺の予想は的外れだったようだ。いやそんなことよりも。
そんなことよりも、只者じゃない?
あんな可愛い子が?
「全く別に怖くなかったけど」
「そこですよ、全く怖くないのが怖い絶対的な力があるのに弱い振りをしてつけこもうとしている。そこが───こわいです。」
そんなもんか、と俺は煮え切らない返答をする。
それも大事だけど、それよりも
「明日かぁ」メイが溜息を吐く。
「無理そうか?」
レットが聞いてくる。わからない。
「無理っぽい?」
メイが聞いてくる。わからない。
「無理そうですか?」
クロネが聞いてくる。わからない。
わからない。
わからない───けれど。
「策はある」
そう言って俺は3人に作戦を話す。
ここで質問です。絶対に勝てないならどうすればいいでしょう?
答えはCMの後で。
◇
これぞ闘技場、という所に俺達は来ていた。
円のステージ。そしてそれを囲む円の客席。
俺と王はその円のステージでにらめっこをしていた。
両者持ち物は木でできた剣だけ。鎧無しの服のみ。俺はサイズが合わなくてお腹は丸見えのような状態なのだが。
「お前は降参したら負けとしよう。俺は両膝をついたら負けだ。それと俺は魔法を使わない、ハンデってやつだ」
「そこで優しさ見せられると困るんだが」
ははは、と王は笑う。
やっぱりこの笑い方は好きになれない。
審判が旗をあげる。
「始めッ!!!」その掛け声に連なるようにして観客の歓声が響き渡った。
先に動いたのは俺だった。
相手に近づいて木の剣を振りかぶる。動作にして1秒もかからなかっただろう。
空を斬る音が、ひずむ。
だが、そんな行動を知っていて、解っていたかのように俺の斬撃はいとも容易く躱される。
斜め横の全身移動。
それは、俺の攻撃を躱しながら、一歩踏み込んだ俺の横に来るような移動の仕方。しかも、コイツは縦に持っている木の剣をを振りかぶりながら移動している
剣先がの向かうところは背中、つまり脊椎。
流石に木の剣の威力といえども脊椎はまずいので、俺は弾けるように右隣にいるこのバケモノに対して反対の左側に転がるような体制でその攻撃を回避した。
すかさず立ち上がり、また対峙するが遅い。
今度は左からの斬撃がくる。
だが、それは左手でガードできる
「───っつう」激痛が走るが、我慢。
左手でガードされた木の剣は勢いを殺さずに流すようにして左から右へと抜ける。
そこに隙が生まれた。
なぜなら、一度構え直す必要があるからなわけで、そこには何秒か、何刹那かの隙が生まれる。と、攻撃をしようとした時───光がゆがんだ。
───もう一度左からの斬撃が来たからだ。
くるり、と回転して、一度目の斬撃の勢いを殺さずに二度目の斬撃を行ってきたと理解するまでが、遅い。
また左手で受けるか?いや、そんなことをしたら間違いなく左手がいかれて、その隙にこれ以上の連撃が飛んできて負ける。
ぼよん、と腹で受け止めた。
モブおじガード。
イケおじには到底できない芸当。
だがしかし、衝撃が殺されるわけではないので俺は吹っ飛び、膝を地面につく。
ここからはただのお遊びだった。
1撃目。
左頬に1発。
2撃目。
太ももに1発。
3撃目。
右頬に1発。
わざと手加減して攻撃している。吹っ飛んだりしないように手加減して。子供の玩具のように俺を何度も木の剣で攻撃する。
お前は降参したら負けとしよう、か。ハンデじゃなく、ただ俺をいたぶりたいだけのルールだったってことか。
8撃目に差し掛かったところでその攻撃がぴたりと止まる。
「なあ、何故お前は俺の娘に関わろうとするんだ?別にお前との関係なんてそこまで深くないはずだぞ?金目的か?いいさ。金ならやるよ。お前のおかげで俺の娘は完璧となった、その例をするのが筋というものだろう。だから早く降参しろ」
「は、金か。金なら前世で結構持ってたんでね、いらねえよ。金は嫌いなんだ」
そう、金は嫌い。
金持ちの家に生まれていなかったら彼女との関係もだいぶ、とはいかないものの多少は良くなっていたはずなのだから。
「そうか、じゃあ気でも失って寝てろ」
それだけ言って王は振りかぶる。
「というかお前───なんで魔法を使わないんだ?」
9撃目。
頭。
俺の頭に斬撃が当たるまで1秒もないというところで。
「───
ぴたり、と攻撃が止まる。
否。攻撃ではなく世界が
1秒だけ。
だが1秒あれば───十分だ。
王城に忍び込む1日前にレットに付き合ってもらって習得した技。
時間停止ものってお約束だろ?
俺はその1秒の隙に王が繰り出す斬撃の軌道から外れる。
「───
透明化する。そして
「───
服が透けて引き締まった体が1秒間見える。
背中に大きな傷跡。
これが魔王との大戦で負った傷。
そこに持っている木の剣でありったけの力を込めて斬撃を繰り出す。
「がぁああァあ゛!!!!」
と、イケおじが不細工な声を立てて吹っ飛び、倒れる。
何故吹っ飛ぶ程の威力がだせるのか。
俺達は昨日1日かけて鍛錬をした。
そう、俺達。
外野からによる攻撃強化魔法の不正行為
勝つためには何でもしていいって言ってきたのはソッチだろう?
と、冷静になって。
俺、普通に最低じゃね?
不正行為してる時点でアウトでしょ!
悪役もいいとこだ。
不正行為。
チートだ。
やっと異世界チートできたと思ったらやってる事ただの悪者なんだもんなあ・・・。
両膝確実についている。
俺の勝利。
不正勝利。
「はははははははははははははははッ!!!」
王が突然笑い出す。
「いいだろう!ルール変更だ。先に死んだ方が負けとしようッ!!!」
やっぱりこの笑い方は一生好きになれないな、と思った。
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