2-2:連続不法侵入者、モブおじ。

 大都市アリステル国王。

 この国を治める人物、そしてこの国最強と言われている男。

 魔王との大戦で負傷し、ここ10年は戦いには参加していないと聞くが最強は最強。暗殺者にも勝てない俺たちが1番避けるべきなのはこの王と対峙することだろう。

 最善の注意を払いつつ、プリンが連れていかれた4日後に当たる今日、作戦を決行していた。

 だが、そんな注意はあまり必要ないらしい。何故かと言うとクロネからの情報で国王は会議に出ているので今日は不在だと言う情報があったからだ。

「国王だったら下のものに任せればいいのに」

 まあ、そのおかげで今回安心して忍び込める訳だが。

「ダメオは知らないだろうけど、女王が自殺して今この国の実権を持ってるのは国王だけなんだよ」と、メイが説明してくれる。

 女王が自殺?国のトップなのに自殺か・・・プレッシャーとかなにかだろうか。俺だったら欲の限りを尽くすだろうに。こんな体で欲なんて言ったら性欲以外ないと思われがちだが・・・多分・・・きっと、他にもあるだろう。

 男子高校生がいやらしいことばかり考えている訳では無い、色々考えてるんだ。例えば?うーん、世界平和とか?

「おい、早いとこ忍び込もうぜ」

 本題に入るかのようにレットがそう言うと俺達は頷く。城の近くの小さい丘のような場所に俺達は来ていて、地面にメイが手をかざすと穴が出現する。

「隠し通路だ。ここから城内に侵入する」

 隠し通路は俺がこの世界にてすぐの普犯牢獄の脱出通路に似ていた。数分歩くと木製の階段が見えてくる。そこを登り、きい、と音を立てながら天井に設置してある正方形の扉を開けて中に入る。

「埃臭ぇな」レットが呟く。

「ここは物置だから我慢して。それより、地図を出してくれない?」

 言われるがままにレットは場内の地図を出し、正方形の木箱の上に置いた。それを4人で囲むようにしてみる。

「メイ、プリンが居そうなのはどこだ?」

「プリンの部屋、弟のテリンの部屋、そして王の部屋だと思う」

 ・・・王の部屋か。

 1番避けたい可能性だが、実際1回逃亡している身だと考えると守りは厳重にされていると考えるのが妥当か。国王の目線で考えると監視下に置くのが1番安全だろう。だが、今日は王は不在だと情報が出ている・・・安心して、とは言えずとも安全ではありそうだ。

「プリ姉って弟がいるんですか?」

「まだ9歳だけどね」

 ───兄妹、か。

「ダメオ?どうかした?」メイに突然声をかけられる「!?、いや、なんでもない。とにかくこの物置からだと1番近いのはプリンの部屋か、プリンの弟の部屋にプリンの弟がいた場合護衛を呼ばれる可能性がある。だから順番的にはプリンの部屋、王の部屋、プリンの弟の部屋ってかんじか?」

「それでいいんじゃねぇか?」

「私はなんでもいいです」

「別にいいよ」

 と、3人が了承してくれた。

 俺達は最新の注意を払って物置から出る。すぐそばの階段を上がって廊下を渡る。赤いカーペットが敷いてあって日本人の俺からしたら絨毯は素足で踏むものなので少し違和感を感じた。

 そんのこんなで。

 プリンの部屋の前につく。

 白く塗られたドアに紫の花の模様が施されている。この時代は紫の染料というのは貴重なんだっけ?まあこの世界と前居た世界での希少価値は違うか。

 金色のドアノブを捻り、中に入る。

 プリンはいなかった。がらん、としている全体的に白色の部屋。

 そう、がらんとしている。

 ベッド、机、鏡、タンス、クローゼット。

 あるのはそれだけだ。このでかい国1番金持ちなのに。そこが少し異常に見えたが、いないことを確認してすぐ出発しなければならない。

 そう、すぐに。

 今すぐ。

 長居していつ見つかるか分からないし。

 そうして通路を進んでいくうちに気づく。

 ────人がいない。

 誰一人として。

 がらんとしている。

「普段こんな静かなの?」

「いや、いつもはメイド達が働いているはずなんだけど・・・」

 

「ぎゃはははははははははははははははははははははッ!!!!!!」


 獣が鳴いたような咆哮が城の廊下に響き渡る。その音源は背後だ。振り返るととんがっている耳、八重歯、囚人服に手錠で両手を塞ぎ、高らかに笑っている《人喰い》カーニバルがいた。

「ここは私とクロネに任せて!!2人は行って!!」

「ちょッと待てよ、別に俺はおめェらと戦いたくて来たわけじゃねェ。チィとばかし付き合え」

「は?何を言って───」

「王が呼んでる」メイの言葉を遮ってカーニバルがそう言うとメイはすぐさま黙った。

「王は何が目的なんですか?カーニバル」

「知んねェよ、話してェんだとさ。お前らと」

 まァついてこい。と、カーニバルが言うので俺達は頭に疑問符を全員浮かべながらついていく。

 これからどんなことが起きるかも知らずに。

 ほいほいと。

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