2-1:モブおじの初デート。
剣術の習得と、魔力の増幅の為に俺とメイはアリステル周辺の草原に来ていた。
ゲームで言うところのレベル上げである。とは言ったものの、ゲームとは全く違い、剣術は前にいた世界と同じ要領で体に覚えさせる必要があるし、魔法も使い方とかを掴まないといけないため、レベル上げと言うより鍛錬といった方が正しい。
だからこれはデートなんかでは無い。頭ではわかっているが少し意識してしまう。
「まず基本的な魔法の習得から始めようか」そうメイが切り出した。
「え?魔法って適性があるんじゃなかったか?」
「適性はあるけど別に他の魔法が使えないってわけじゃない」
そうなのか。てっきり俺は指定された魔法しか使えないと思って諦めていたが他の魔法も使えるらしい。
やっとエロ能力とはおさらばだ!!
まあ、このエロ能力に結構助けられたのだが。
「基本的な火属性魔法から習得しようか」
メイはそう言って虚空めがけて右手を前につきだす。
「───
そうメイが唱えた瞬間、メイの手から炎が飛び出す。数十メートル飛んでその炎は消えてしまう。
「ダメオが習得してる魔法と大体は同じ。手に力を込めて詠唱するだけだからやってみて」
俺も手を虚空めがけて前につきだす。
「ファイア!!!」
手にどんどん熱が集まっていき、手のひらが焼けるように熱い。「これは行けるぞ!」と思い、さらに手に力を入れるが
「───あれ?」
手の熱が消えていく。数秒もしないうちに普通の手の温度になってしまった。
「おかしいな。普通できるはずなのに・・・魔力は回復したんだよな?」
「そのはずだけど・・・・・・」
うーん、と数秒悩む。するとメイが「他の魔法も試してみよう」という提案をしてくれたのでその提案に乗った。
だが。
「───
「ウォーター!!」
メイの突き出された手から水が発生し、それと反するように俺の手からは何も出ない。少し手の温度が下がったくらいだ。
「もしかしたら呪いの影響なのかもな」
そういえば俺は得体の知れない呪いにかかっていたんだっけ。
モブおじになる呪い。
この呪いは案外厄介なものらしい。ただモブおじになるだけだと思っていたけれど、魔法も制限がかかっているとなると本当にすごい呪いなのかもしれない。
たしかあの《呪喰い》カースピエロとか言ったやつも興味津々だったな・・・モブおじになる呪いって、呪いのスペシャリストに褒められるような高度なものなのか?
まあ、そこに関しては考えても無駄か。受け入れてこれからもエロ能力を使っていくしかない。
さよなら。夢と希望溢れる攻撃魔法・・・・・・
おかえり。エロ能力・・・・・・
「魔法は無理っぽいしから剣術について教えてくれないか?」切り替えた俺のお願いに「いいよ」とメイは了承してくれる。
俺とメイはそこら辺にいる魔物を倒しつつ、剣術の鍛錬を一日中行った。間合いのとり方、剣の振り方などをメイは手取り足取り教えてくれたのですんなり剣術に関しては習得できそうだ。
勿論、手取り足取りというのはそういう意味ではない。
昼になって。
さっき狩った牛の魔物や、木の実を使ってメイが昼食を作ってくれた。食べてみると非常に美味でさすが元メイドさんだとしみじみ思う。
メイド服のメイか・・・・・・
うん、飯が進む。
「美味しいよ!これ」
「それは良かった、それよりも聞きたいことがあって───なんで私を助けたんだ?」数秒の間を開けて、メイがそう聞いてきた。
「だって私とダメオって別にその時深い関係でもなかったでしょ?」
「いや、俺はメイとプリンに助けられて刑務所を出れたわけだし・・・」
「でも、2日くらいで外に出れた。そんな関係の私をどうして危険を犯してまで魔犯牢獄に助けに来てくれたのか気になったんだ」
どうしてか、と言われても。
うーん。どうしてだろう、と数秒考えるが答えは決まっていた。
「───やっぱりメイが可愛かったからかなあ」
「は、はあ?」
メイの表情が一気に熱を帯びる。別に格好つけたわけとかじゃなく、本音を赤裸々に語っただけ。
モブおじらしく。
モブおじよろしく。
「じょ、冗談もほどほどにとしけよ!まったく・・・」
メイは照れ隠しに作った昼食を食べる。俺も昼食を食べ、沈黙が続く。
「そんなこと言ってるとクロネちゃんが拗ねるぞ」
「え?」
ここで何故クロネの名前が出てくるのだろうか
「だから、ダメオはクロネのこと好きなんだろ?」
「え?」俺は呆気にとられる。何故そんなことになっているのだろう、心当たりが・・・
あ。
大ありだ。
「いや、あれは違くて!その、そういう好きっていう意味じゃなくて。いやまあそう意味でも無きにしも非ずなんだけど・・・ええっと」
俺はどう言えばいいのかしどろもどろになってしまう。
「メイはプリンのことが好きだろ?そういう意味の好きだ」
メイは少し悩んでうーん、としぶしぶ納得したような声を漏らす。
「だから俺はメイのことも好きだ」
「───ッ、だから!もう・・・」
本当に怒ってしまったのか、メイはぷい、とそっぽを向いてしまう。
午後の鍛錬が少し厳しかったことは照れ隠しということにしておこう。
◇
次の日、俺は午前中は剣術の鍛錬をした後、午後はクロネ、レットと合流した。クロネとレットは情報集めや、装備の調達などを昨日から担当させていた。
レットは軽快なトークで酒場などの場所で情報集め。
クロネは暗殺者というポジションを使って裏の住人からの情報集め。
「で、結果はどうだった?」
「あんまり情報は集まんなかったが、これを見ろ」
そう言って木製の机に広げたのは地図だった。
「王城の地図だ。メイが大体把握してると思うが、さすがに隅々じゃねぇだろ?役には立つと思うぜ。やっぱり情報漏洩は防いでるよなぁ、表に出回っている情報がぜんぜんねぇ」
「私からは他の3人の暗殺者についてです。《死喰い》デッドイートについては他国に侵入しているため、問題はありません。《呪喰い》カースピエロについてもそっちの援軍として送り込まれたらしいので、脅威は《人喰い》カーニバルだけかと。」
結構いい知らせが耳に入ってくる。
相手にするのは《人喰い》カーニバルだけか。そうなるとメイとクロネ2人で大丈夫だから、レットの鼻の良さを使ってメイを魔犯牢獄で見つけた時のようにプリンも見つけてもらう。そこで、俺の『催眠』や、『透明化』でプリンの所まで進み、そのまま脱出というプランでいける。
「そして、装備はこちらです」
そう言ってクロネは鉄でできた防具と、ナイフ、剣を机に並べる。
「レットさんとメイ姉は防具を着てください。私は軽さが取り柄ですので、防具は不要です」
あ、レットはさん付けなんだ。
ってそうじゃなくて。
「えっと、クロネさん?───俺のは?」
「レットさんのサイズはギリギリあったんですけどダメ兄のサイズはなくて・・・作るとしたらオーダーメイドになってしまうかもです」
なんだそれ!!!
カッチョイイ鎧とか着れるのかと思えばまたモブおじの呪いのせいか!!どこまで俺の異世界ライフを邪魔するんだモブおじ───!!
まあ、仕方ないか・・・どの道サイズがあったとしても俺の元々の重量プラス鎧の重量ですぐ足が疲れて戦闘どころじゃなくなるだろうし。
その意味では好都合か・・・・・
「ま、まあ元気だしてください。クロネとお揃いです」
うわあ。
昨日言ったこと前言撤回。俺、クロネのこと好きだわ、異性として。
て、異性として好きなんだ!!ってロリコンの定型文じゃねえか。危ない危ない、俺はロリコンじゃないんだからまったく。
「とにかく、準備は整った。プリン奪還作戦の決行は───明後日だ」
プリン奪還作戦なんてそのままのネーミングをつけてしまう。そして、プリンが人名ということを知らない人からしたらただの馬鹿である。
「なんで明後日?」
「まあ、色々と試したいことがあるんだ」
ふうん、と一同は納得してくれる。
「午後は自由にしよう、根詰めても悪いだけだと思わないか?」
ということで、午後は自由になった。
俺は以外にもレットを誘った。
美少女だけしか用はない訳では無いことを主張しておかないとまずい気がしたからとか、そういう理由では無い。
場所に向かう道中。
「そういえば、レットってなんで捕まってたの?やっぱり魔物とかの差別?」
「うーん、まぁそういうのもあんだがさすがに捕まるまではいかねぇよ」
じゃあなんで捕まってたの?と問うと、なんだか話すのを迷っているらしく、そわそわし始める。
プリン、メイ、クロネがそわそわしていたら可愛いもんだが、相手はオークである。可愛さなんて1ミリもない。
「実は・・・」と、レットがふつふつと話し始める。
「───豚にナンパしてたら貴族の家の家畜だったんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「二度も言わせんなよ」と、少し照れながらレットは言う。だから可愛くないって!
「豚にナンパしてたら貴族の家の家畜だったんだ・・・」
「いやいやいや!二度も言われてもわかんないよ!?」
本当に大丈夫かなあ。
そんな不安を抱えながら俺とレットは練習場所に向かった。
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