1-11:それでもモブおじは進んでいく。
俺は得心して、点と点が線で結ばれたような気がした。
まず、「王女様が行方不明になったッ!!!集合しろッ!!!」と、言われ、見張りが全員いなくなり、タイミングよくメイとプリンが現れた。
タイミングが良すぎる。
次に、俺とメイとプリンが襲われたのはプリンが王女だからおってきたのだろう。そしてメイが捕まった。
メイは兄妹だから殺さなかったわけじゃない。
────プリンをおびき寄せる餌として生かしておいたんだ。
そして、俺があんな高いところから落ちても死ななかった理由。
レットは薄々感ずいていたみたいだが、並の回復魔法では不可能だ。しかも俺だけじゃなく全員助けるなんて回復魔法の域を超えている。それは王族の魔力量、魔力の質によってなせる技だろう。
最後に、なんで俺達は酸素濃度の薄い地下深くでも平気で呼吸することが出来たのか。
それはプリンがずっと俺たちに魔法をかけ続けてくれたからだろう。
「クソッ!!」
俺はそんな努力にも気付かず、「俺がメイを助けた」なんて考えていたんだ。
最低だ。最低だ。最低だ。
あの後プリンだけ囚われ、《呪喰い》率いる兵士たちに連れていかれた。俺達は泊まっていた宿に戻って、なんとなく時間を過ごしていた。
浪費していた。
無駄にしていた。
「なぁ、メイ。プリンが王女って本当か?」レットが疑問を口にする、というより最確認と言ったろ方が正しいだろう。
「・・・・・・ッ、本当だ。騙しててごめん。プリンは王女といっても国王の実の娘では無い」
「血の繋がりはないの?」
「国王の妹の子供を引き取った子だ。だからあの愚王と同じだとは思わないで欲しい」
問題は助けに行けるか、だ。俺、メイ、レット、クロネでは普通の兵士ならいけるだろうが、《人喰い》カーニバルと、《呪喰い》カースピエロ、そして、1番強いとされている正体不明の《死喰い》デッドイートに到底太刀打ちできないだろう。
「私のせいです。私が裏切らずにメイ姉を解放した時点で引き返していれば・・・」
「いや、クロネのせいじゃないよ。俺のせいだ。」
「いや、オレがもっと鼻立てて警戒してりゃあこんなことにはなんなかったぜ」
「それを言ったら私がそもそも捕まらなかったら!!!」
こんなことを話していても意味が無い。俺らが一番やること、それは強くなることだろう。
方法はなんだっていい。仲間を増やすでも、特訓するでも、なんでもいい。
なんでもいいから早く。
なんでもいいから速く。
強くならないと。強くならないと。強くならないと。
つよくならないと。つよくならないと。つよくならないと。
ツヨクナラナイト。ツヨクナラナイト。ツヨクナラナイト。
じゃなきゃ、プリンが、
プリン、が?
どうなると言うんだ?
あ。れ?なんで俺
なんで俺プリンを助けようとしてるんだ?
だってそうだろう?別に俺とプリンの関係はなんでもない。
友達でもなければそこら辺であった人だ。
俺がそこまで肩入れする必要はあるのか?
というか、というかだ。
プリンは助けて欲しいのだろうか。
そう、そこだ。
王族だぞ?俺なんかといるよりもずっと楽しく、平穏な暮らしを過ごしていける。プリンはずっと魔法を使って俺たちを生かしてくれていた。それがどれだけ負担だったかも知らずに。
そろそろ自覚したらどうだ?
自分がモブおじだということに。
今の今まで自分がモブおじだということを「だからなんだ」と、捉えてきたが、
モブで。
おじさんだ。
出しゃばりすぎたのだ。
プリンはこの国の次期王女だ、それを阻止しようとしてどうする。国を収めるという立派な役目があるような人間を俺みたいなやつが邪魔をしてはいけない。
「メイ姉はプリ姉とはどういう関係なんですか?」
「主人とメイド、と思ってもらっていい」
「じゃあ、主人を助けないといけませんね」
ふふ、とクロネは笑う。
「ま、しゃあねぇな。俺も付き合うぜ」レットは微笑みながらそう言った。
「ダメオはどーすんだ?」「ダメ兄はどうするんです?」「お前はどうすんだ?」
そっか。俺が、どうしたい、か。
なら、俺は。俺は。
「───プリンを、助けたい。だから協力してくれ」
それは俺が初めて「人を求めた」瞬間だった。
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