1-10:モブおじ脱出。

「もうすぐ出口だぞ!」

 地上の匂いを嗅ぎつけたのか先頭のレットから声がかかる。1時間くらい螺旋階段を登りっぱなしだったので、俺たちの顔はぱあっと明るくなった。 

 足がとにかく痛い。外傷ではなく、疲労からの痛み。ディズニーランド行った帰りみたいな。太っているので足にかかる負荷が大きく、その2、3倍の疲労感に苛まれていた。

 この螺旋階段は普犯牢獄に通じていたらしく、普犯牢獄の運営室のようなところから俺たちは出た。

「ふぅやっとついたぜ」

 そして、普犯牢獄を出ると


 ばっ


 という音と共に数人の兵士が現れ、先頭から縄で縛りつけられてしまう。俺達は魔力なんて1ミリも残っておらず、体力ももう尽きている状態で為す術なく俺たちはどんどん捕まっていく。

 だが、クロネは違った。

 さすが《闇喰い》。どんどんその兵士たちを蹴散らしていく。

 が。

 ぴたり、とクロネの手が止まった。

 麻痺したかのように。

 

「あんまりおいたをしちゃダメでしょぉ、《人喰い》じゃないんだからぁ。私達は暗殺者、個人的な理由で動いたらだめだよぉ。」

 大人びた体でところどころ穴が空いている服。落ち着いている、と言うより眠そうな姉ちゃんがクロネと対峙していた。

 なんとなく。

 何となくわかる、こいつはやばいと。

 何故か。

 なんでかは知らないけれど。

 ───クロネが殺されると思った

 その女性は妖艶な笑みを浮かべる。

「やめ、ろ」

「ん?なぁにぃ。、ははは、ははははははははははぁッ!!!」

 急にその妖艶な笑みが高らかな笑いへと変わる。

「君面白いねぇ、そんなすごい呪いどこで拾ったのぉ?このレベルの呪いは《呪喰い》カースピエロの私でも無理だよぉ」

 《呪喰い》カースピエロ。

 今、そう言った。メイに話してもらった暗殺者の1人だ。

 と、ここで思う。

 なんで俺達は狙われるんだ?

 こいつら暗殺者は王直属の暗殺者なんだろ?そんな大層な人間達に命を狙われるほどのことをいつやったのだろう。

 俺達は《死喰い》以外の3人に命を狙われていたという事実がどうにも引っかかる。

 た、確かに、野外露出、女児勧誘、オマケに不法侵入と犯罪を積み重ねてきてはいるが、こんなに殺されそうになるなんてことはないだろう(多分)。

 あれ、でもメイは《人喰い》カーニバルに負けたのに殺されていない。

 それは《人喰い》が言っていたようにメイが兄妹だからだろうか。

「ちょっとぉ、色々調べさせてもらうよぉ」

 そう言って《呪喰い》が近寄ってくる。2メートル、1メートル、そして0メートル。

 《呪喰い》の体が俺の体に押し付けられる。あの、色々当たってるんですけど?

「ふうん、面白いねぇやっぱり」

 《呪喰い》は俺の体をつねったりして観察している。気に入ってもらえて何よりなんだが、何だこの状況は!?シリアスパート終わり?早くない?

「ありがとぉ」と言って俺の体から離れていく。ちょっと残念。


「次は中身だね」

 ひうん、と間一髪で振るわれたナイフを頭だけ後退させることによって躱す。ナイフにはよく分からない液体が付着していた。

 ───毒か。

 《呪喰い》カースピエロの名前の由来が分かった。

 毒でじわじわと殺すんだ。

 呪いのように。

「やっぱりぃ、ナイフよりも針とかの方がいいよねぇ」

 そう言って2撃目がくる。

 『透明化』も『催眠』も魔力画 が残っていないので使えない。かと言って避けることはこんな狭いスペースで避けることは不可能だ。

 ───終わ

「やめてください!!」

 ぴたり、と。

 《呪喰い》の攻撃は止まった。

「アリステル次期女王が命ずる。そのもの達を離せ」

 プリンが淡々と、そう言った。

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