1-5:ロリコンのモブおじなんて見飽きたよ。

 うーん。なんて言う不細工な声と共に体を起こすことに慣れてきた。あれから2日たち、俺とプリンはメイを助け出す算段を立てていた。

 場所は俺が2日前転生して目覚めた宿屋だ。そこには『元々の体の所有者』が残していった装備品が放置されていたため、俺の適正魔法の強化や、衣類、賃金には困らなかった。

 まず、『透明化』まだ10秒間だけだが、相手の認識から免れられるという技だ。透明だからといって壁をすり抜けたりはできないし、目を凝らせば見えなくもないそうだ。まあそこら辺は俺の力量不足のせいなのだろうけれど。

 そして次に、『催眠』これは対象が何かに視線を集中している状態じゃないと使えない。そして、催眠とは言ってもなんでも言うことを聞かせられるわけじゃない。対象が「迷っている状態」でなければ使えない

 例えば、「死ね」という命令に対しては「は?」となるが、「道を譲ってください」くらいの命令、というよりお願いなら引き受けてくれる技だ。

 なんだよ、ルルーシュみたいなの期待してたのに。

 漫画とかで見る催眠の下位互換と捉えていい。

 そして、『透視』については全く使い物にならない。

 これは俺の力量不足によるものだが、壁の先を見ようとしても壁の断面までしか見えない。

 女の子の着替えとか見れないのだ。

 いや、見たいとは思ってないよ?精神はモブおじではないし。

 こんな見た目で言っても説得力の欠けらも無いけど。

 これらの能力をマスターしている世に出ているモブおじは最強と言っていいだろう。

 どんだけ鍛錬したんだ、あいつら。

 もはやエロ同人誌とかで出てくるモブおじ達に尊敬の念を抱いている自分がいる。厳しい鍛錬と努力をを積み重ね、女の子を犯し、我ら男の性欲を満たしてくれていたと思うと涙が出てくる。

 白くはないよ?

 多分。

「これが地図です。メイが囚われているのは地下2階の魔犯牢獄だと思います。」

 俺がくだらない思考を進めているのと同時に、プリンは作戦の算段を進めていた。

「魔犯牢獄ってなに?」

「えっと、ダメオさんが囚われていたのは普犯牢獄と言って犯罪を犯した人間が捕まる場所。魔犯牢獄は魔法を使って犯罪をした場合に捕まる場所ですね。魔犯牢獄では魔法での脱獄を防ぐために厳重な警備が行われているので救出の難易度は普犯牢獄とは桁違いです」

 そこに乗り込むと思うと、俺の力量どうこうじゃなくなってくる。しかも、俺もプリンも戦闘向きじゃない。

 エロ能力と、回復能力。

 戦力の欠けらも無いような2人で乗り込むのはきつい。

「仲間が欲しいな」

「・・・ですね」

 それ以外選択肢はない、けれど「警備の凄い牢獄にいくんですけど一緒に来てくれる奴はいますか?」なんて言う誘いをするほどバカではない。

 そうなってくると裏ルートからの仲間を作るしかなくなる。

 裏ルート。

 魔犯牢獄に囚われている魔法で犯罪を犯してしまった人の仲間か親戚に声をかければ仲間になってくれるだろうという計画だが、そういう魔法で犯罪を犯した人の周りの人間もそういう犯罪を犯している可能性が少なからずあるわけで、リスキーではあった。

 その事をプリンに伝えて話し合い、とりあえず外に出ないと何も始まらないという結果に話し合いは着地して2人で外に出た。

「誰か魔犯牢獄に一緒に行ける人いますかー?」

 バカがいた。

 そう声がけをしているのは白いワンピースをきたおかっぱ娘。小さい矮躯とまだ少し丸みを帯びている顔つきから齢13低度だと思う。髪は黒く、目も黒い。

 黒く。

 黒々しい。

 色素が濃いのだろうか。瞳孔が見えにくいほどの黒い目と茶色が全く混じっていない黒い髪。病弱なのかそんな黒い目と髪に反するような白い肌。そしておかっぱを考慮すると連想できるのは、

 日本人形。

「あの・・・すいません。私たち魔犯牢獄に忍び込みたいんですけど・・・」プリンが先に動いていた。

 なるほど、ここにもバカがいたわけか。

「プリンちゃん、やめようよ。絶対なにかの罠かなにかだって!連鎖販売取引とかそう言う類のやつだって!」俺は小声でプリンに語りかけるが「連鎖?なんです?ぷよぷよですか?今はそれどころじゃないんで。」

 ぷよぷよじゃねえよ。

 あと、なんでぷよぷよ知ってんだよ。

 まあ多分、魔物で同名の連鎖しながら攻撃してくるやつでもいるのだろう。確か宿屋で見た魔物の図鑑でそういうやつがいたのを覚えている。

「ほんとう?それじゃあ一緒に行って?お姉さん」

「はい!是非行きましょう!」

 もう一緒に行くムードになってるし。

 一緒にイくヌードではないです。こんな見た目なので1回1回説明しないと誤解されるので言っておきますが。

「私はプリンと言います」プリンはそう自己紹介して視線を俺に向ける「俺は───」一瞬迷ったが、「ダメオです」と自己紹介した。

 プリンに「ダメオ」と呼ばれているので結局この少女にダメオ呼ばわりされる未来が見えるのでもういっその事ダメオと自己紹介した方が早い気がした。

 決して13歳くらいの少女に罵られたかったからとかそういう理由ではない。

 決してない。

「よろしくです。プリ姉にダメ兄」

 だめにい。

 どう転んでも結局俺はダメなやつらしい。

「ダメオさん?なにニヤニヤしてるんですか?」

「いや、表情筋が体操選手の体並に柔らかいだけだよ。気にしないで」

「それよりも」良かった、それよりもで済んで「あなたの名前はなんと言うんですか?」

「黒ネズミ」

「なかなか特徴的な名前ですね」

「偽名だよね!?」

 まあ確かに、全体的な黒さと矮小な体つきからはネズミが連想されるけども。

「偽名・・・です」少し申し訳なさそうに黒ネズミ(?)は謝った。

 まあでも、それが正常だ。見ず知らずの男、しかも、こんなモブおじに名前という個人情報を漏らすのは危険すぎる。

 そんな意図を汲んで。

「じゃあ、黒ネズミを略してクロネでどう?」

 と、俺は提案した。

「はい、じゃあそれで」

 淡白な返事だった。

 割とセンスあると思ったのに。

「いいですね、クロネ」プリンには気に入って貰えたようだ。

「じゃあこれからよろしく」

 こくり、とクロネが頷く。

 まあ、こんな幼女によろしくしているモブおじなんて犯罪臭どころかもう犯罪だろ。

 よかったあ、異世界にポリスメンがいなくて。

 野外露出に女児誘拐、ひええ、こわい。

 潔く、牢獄に行くとしましょう。

 目的はちがうんだけどね?

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