第3話 コボルト族・マーヤ
人間族と魔族の関係は、当初、良好な関係だったとされる。
人間が雪女と結婚するような
やがて人間族が少子化の時代に入ると、人間族の中で
「魔族が
と。
魔族の中には、古くは
『嘘も100回言えば真実になる』
という言葉が表す通り、人間族の間で嘘が真実のように
当然、魔族も自衛に動き、ここで両者の間で開戦。
一進一退の攻防が続く状態が、
その為、魔族の間では反人間族主義が浸透しているのだが、そんな環境下でオルグレンが、公務員になれたのは奇跡に近い。
「ふぅ……」
新卒者歓迎会で文字通り、10回殺されたオルグレンは、帰宅するなり風呂場に飛び込んだ。
飲酒後の入浴は医学上、あまり良くないのだが、それでも疲れを癒すのは入浴が1番だ。
「兄さん」
「おお、マーヤ。お帰り」
コボルト族の女の子が顔をドアから覗かせる。
コボルト族は獣人系魔族の一つで、帝国国内各地で集団生活を送っている。
「一緒に入っていい?」
「いいよ」
マーヤは獣耳をヒョコヒョコと動かして、一旦、ドアを閉めた。
更衣室から衣擦れの音がした後、再び開く。
自分から言ったくせに恥ずかしいのか、バスタオルで大部分を隠している。
昔は恥じらい無くオルグレンと混浴していたのだが、最近では精神的に成長したのか、この具合だ。
「兄さん、今日は何回死んだの?」
「10回だよ」
「課長とレヴィ?」
「うん」
「あの2人、罪に問えないの?」
怒りつつ、マーヤは
そして、隣まで来た。
バスタオルが濡れ、マーヤの体のラインがはっきりと分かるが、オルグレンは気にしない。
2人は義理の兄妹。
オルグレンが養子に来て以来、昔から一緒に居る為、今更恋愛感情に発展することはないのだ。
「どうなんだろうね。考えたことないよ」
「でも、殺人罪じゃないの?」
「この国に人は居ないからその刑法は無いよ」
「あ……ごめん」
「責めてないよ」
オルグレンは笑って、マーヤの頭を撫でる。
魔族と人間が共存共栄していた時代にはあったが、人間が人間領に帰った今、
その為、魔族領で人間は虫けら同然だ。
見つけ次第、どうしてもいい修羅の世界なのである。
「それよりも学校はどうだ?」
「うん。無事、慣れてきた」
マーヤは今春、中学を卒業し、高校に入学したピチピチのJKだ。
といってもオルグレン同様、陰キャラなので目立つことはほぼ無いが。
「兄さんは、高校生活どうだった?」
「う~ん。数年前だから覚えてないな」
中卒、高卒が珍しい魔族社会において、オルグレンは最終学歴が魔族帝国大学の所謂、
庁内の先輩後輩の多くも高卒が多数派なので、オルグレンのような大卒は少数派である。
「兄さんくらいの頭なら一流企業でも良かったのに」
「大手からも数社内定を貰ったけど、やっぱり安定が1番だよ。民間だと経済状況に左右されるからね」
オルグレンは、高給より安定派だ。
不景気になると、公務員も
入庁すれば、初日から有給休暇を貰えるし、退職金も数千万エン単位貰える。
レジャー施設やホテルなども公務員割引で安く利用することも出来る。
公務員が不人気になる時代は、好景気が来ないと、まず無いだろう。
「兄さんは堅物だね? 人生楽しい?」
「う~ん。どうだろ?」
生まれてこの方、楽しいと心底思ったことが無い為、オルグレンは腕組みをして考える。
「……多分、無いな」
「じゃあ、私が兄さんを楽しませるよ」
「どんなこと?」
「結婚相手を探す」
「え~……」
「嫌なの?」
「今ん所、その願望は無いよ。仕事で忙しいし」
「でもお父さんとお母さん、初孫を楽しみにしているよ?」
2人の父母は、帝都で働いている為、この家には居ない。
帰ってくるのは、年末年始くらいだ。
因みに、この家の生活費は全てオルグレンが
「初孫ねぇ……そもそも他種族同士で子供、出来るのか?」
「さぁ? 『
『田螺長者』は子供ができなかった夫婦が神様に祈った所、田螺が生まれた、という
「てきとーだな?」
「だって身近な例を知らないから」
マーヤは、こちらを見た。
「課長やレヴィと結婚したら、証明出来るよ」
「何であの2人なんだよ」
「もう半分付き合ってるじゃん」
「あの2人は
「……兄さんって、罪作りな人だね?」
「何が?」
「その内、刺されるよ。両側から」
「何の話だよ」
「知らない」
そっぽを向くマーヤ。
仕事が出来るオルグレンであるが、女心には
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