第二十五話
壁の色は
「先にシャワー、
「うん」
里美は、ゆっくりと
しばらくすると浴室からバスタオル一枚を体に巻いて戻ってきて、うつむいたままベットに座った。
それから私が浴室に入り、シャワーを浴びた。バスタオルを腰に巻いて香水を手首と首に、つけた。浴室から出て、里美が座っているベットに私も座った。
「里美……」
私たちは、キスをした。
それから私が立ち上がると、里美も立ち上がった。
私は向かい合って立っている里美のバスタオルを脱がそうとした時、ふと、
私が、ためらっていると里美が顔をあげて、聞いてきた。
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
私は、そう答え、また里美のバスタオルを脱がそうとした。だが、やはりできなかった。
私はベットに座り少し考えた後、里美に聞いた。
「タバコ、吸ってもいい?」
「うん」
私はタバコを一本吸い、少し考えた。
どうしてバスタオルを脱がせられないんだろう? でも考えても、理由は分からなかった。
だから、告げた。
「ごめん。今日は少し、調子が悪いみたいだ」
横に座っていた里美は、気にしていない
「うん。そういう時も、あるよね」
私たちは少し休んだ後、ラブホテルを後にした。
私は、その夜、里美にLINEを送った。
『今日は、ごめん』
すると里美から電話が、かかってきた。
『もしもし? いいわよ、気にしなくて。それより来週は、どうする?』
『今は、まだ考えていない……』
『だったら温泉は、どう?』
『温泉か……』
『そう。一泊二日の温泉旅行。気分転換にもなると思うし、どう?』
なるほど、と思った私は答えた。
『うん……。悪くないかもしれない』
『じゃあ、決まりかな? 場所は信吾に、まかせる』
『そうだな、ちょっと探してみるよ。おやすみ』
『おやすみなさい』
私は最初、乗り気ではなかったが里美が言った『気分転換』という言葉で、ああ、そういうのも良いかも知れないと思い始めていた。
それで次の日に、さっそくスマホで
私が里美に、『今度の土日は、どう?』と聞くと、『いいよ』とのことだったので、温泉宿に予約を入れた。
●
月曜日の午後七時。私と神崎は、神崎の行きつけのバーにいた。
「そうか、温泉旅行か。やるじゃないか」
「まあ、温泉旅行って言っても、一泊二日だけどな」
すると神崎はグチを、こぼした。
「俺の方は、全然ダメ。このところ例のプロジェクトで
結婚記念日を忘れちゃってさあ。カミさん怒って、もう三日も口をきいてくんないんだぜ?」
私は、少し笑ってしまった。
「それは大変だな。ははっ」
すると神崎は
「お前が笑ったところ、久しぶりに見たような気がする」
「そうか?」
神崎は両手を上げ、伸びをしながら答えた。
「いいなあ、これも里美ちゃんの、おかげかあ。いいなあ、俺も里美ちゃんみたいな彼女、欲しいよ」
私は、冷静に返した。
「何、言ってんだよ」
すると神崎は、
「でも温泉旅行か、悪くないな。それでカミさんの
同じ頃、里美の親友の
里美は
「フンフンフンフーンフフフーン」
麻理は
「で、今日は何なの?」
「今度、信吾と温泉旅行に行くことになりました。エヘヘ」
「それは電話で聞いたわよ。他に何か、あるんじゃないの?」
「いいえ。それだけです。エヘヘ」
それだけって……。麻理は里美のニヤケ顔を見て少しイラっとして、
「でも最初の旅行って結構、大変だと思うなあ。もしかすると前みたいに、ケンカしちゃったりして?」
するとニヤケ顔のまま、里美は答えた。
「ケンカしても、仲直りできるの。そういうカンケイなの、私たち。エヘヘ」
火に油を注いじゃった……、と思った麻理は、立ち上がった。
「はい、ごちそうさま。いつまでも、あんたのノロケ
すると里美に、腕をつかまれた。
「えー? もっとノロケさせてよ。エヘヘ」
「もう、本当に帰るんだから! その手、放してよ!」
しかし店から出た麻理は心の中で、つぶやいた。
『良かったわね、里美』
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