第二十四話
私は、里美がマンションから出ていくのを、
そして、あんなことで怒って帰るなんて、里美って気が短いのかなあと考えた。
しかし、ふと思った。この間は自分が面白いと思っている映画を面白くないと言われて、意地を
うーん。確かに自分が面白いと思っている映画を面白くないって言われるのは、ショックだよなあ……。
私は、取りあえずタバコを一本吸って考えた。
この間は、里美の方から電話をしてきたよなあ。今回は俺から電話をして
私は、もう一本タバコを吸って考えた。もうちょっと待ってみるか。もうちょっと待っていたら里美から電話が、かかってくるかもしれない……。
しかし一時間が
私は、再び考えた。
うーん。やっぱり俺から電話をした方が、良いのかなあ……。でも、ひょっとしたら今、里美が電話をかけようとしているかもしれない……。うん。もうちょっと、待ってみよう。
さらに一時間が経った。私は、さらにタバコを一本吸い、ふと考えた。このまま、ずっと里美から電話がかかってこなかったら、どうしようと。そして、これがきっかけで里美と別れることになったらどうしよう、という不安に襲われた。
そして気が付くとスマホを手に取り、里美に電話をかけていた。
『はい、もしもし。里美ですけど』
私は、
『あれ、里美? おかしいなあ、神崎に電話をしたつもりだったけど。間違えて里美に電話、しちゃったかあ』
すると里美は、冷静に答えた。
『あ、そう。なら電話、切るわよ』
『ちょっと、待ったあ! せっかく電話がつながっているんだから、ちょっと話さない?』
『え? 何?』
私は里美に電話を切らせないために、またしても嘘をついた。
『えーと、さあ……。あ、そうだ! 里美、俺の部屋に何か忘れ物を、していかなかったか? 何か、部屋にあるものが増えているような気がするんだよなあ……』
だが、そんな私の気持ちを知ってか知らずか、またしても里美は冷静に答えた。
『別に忘れ物を、してないわよ……。じゃあ、切るわよ』
『ちょ、待てって! えーと……。あ、そうだ! 俺が、この前、里美の部屋に何か忘れ物をしなかったか? なんか最近、物が一つ無くなったような気がするんだよなあ……』
『それも無いわよ……。じゃ、切るから』
私は噓をつくのを止め、とうとう本音を言った。
『だから、ちょっと待てって! つまりあれだ、えーと、さっきはゴメン……。
あの映画、感動するシーンも確かに、あったよなあ……』
すると里美も、言ってくれた。
『まあね……。でも、いいのよ。無理しなくても。私もちょっと、意地を張ってたような気もするし……』
『いや、俺が悪い。自分が面白いと思う映画を面白くないって言われたら、意地になるのは俺がよく分かっていたのに……』
『もう、いいよ信吾。信吾の気持ちは、もう、よく分かったから』
『しばらく映画やDVDは、止めた方がいいな』
『そうね』
私は、
『また、海に行かなか? こういう時は海だ!』
『そうね。それが、いいかもね。お弁当を作っていくから、今度こそ一緒に食べようよ』
『うん、楽しみにしてるよ。それじゃあ』
私は里美に、ちゃんと謝ることができ、しかも海に行く約束を取り付けて、ホッとした。
●
土曜日の昼。私たちは私が告白した、あの海にいた。コンクリート
内容は、おにぎり、卵焼き、から
それに、おにぎりにちゃんと、
「どう? 美味しい?」
「うん、美味しい!」
「そう、ありがとう」
弁当を食べた後、二人で少し
里美が、告げた。
「私たち、いい歳して、つまらないことでケンカしたわね、それも二回も。私たちって、ちょっと子供っぽいのかなあ……」
「そうかもなあ……」
「もう、止めようよ」
私は、確信をもって言った。
「でもケンカして分かったこともある。里美の映画の好みとか」
「あ。私も信吾の映画の好み、分かったような気がする!」
「それにケンカをしても、こうして仲直りできることも分かった」
「そうね……」
里美は私の左肩に、寄りかかってきた。私は左を向き、里美の肩を抱き、キスをした。里美も私の首に腕を回してきた。
少しした後、立ち上がって抱き合い、またキスをした。しばらくしてから、
私は里美を見つめて、告げた。
「俺、里美のことが、もっと知りたい」
里美の目は少し、うるんでいた。
里美も、告げた。
「私も信吾のこと、もっと知りたい」
私は里美のことを、欲しいと思った。
だから、告げた。
「俺、里美が欲しい。いい?」
里美は少し緊張した声で、答えた。
「うん……」
それから二人で車に乗った。ラブホテルに行く途中、二人とも緊張していて車内に会話は無く、宇多田ヒカルの曲だけが流れていた。
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