第二話
優子と付き合っていた頃に、言われた。
「タバコはもちろん体に悪いから本当は止めるのが一番なんだけど、そんなに美味しそうに吸われると止めろとは言えないわね。でもせめて本数を減らして」
そして優子の前では、吸う本数は減った。しかし優子が亡くなってからは本数は元に戻ってしまった。タバコを吸う私ではなく、優子の方がガンになるとは皮肉なものだ。いや、人生なんてそんなものか。
テレビの時刻で午前七時三十分になったのを知り、会社に行くことにした。私はリビングに置いてある棚の上の写真立ての中で微笑む優子に、心の中で『行ってきます』と告げた。
そしてマンションをあとにし、バス停に向かった。
●
「だーかーらー、私は絶対、幸せになってやるって言ってんのよ!」
そう言って
またか、そう心の中でつぶやき
昨日、里美から電話で『明日、いつもの場所で待ってる』と言われた時は嫌な予感がしたが、それは的中した。里美は男に振られたりすると店内が、ちょっとライトダウンされたお洒落な雰囲気のこの居酒屋で、麻理にグチをこぼすのだ。
里美は赤い顔とすわった目で、麻理にからんできた。
「ちょっと聞いてんの、麻理?」
麻理は両方の手のひらを里美に向けて答えた。
「もちろん、聞いてる、聞いてる。それにしても
友太とは以前、合コンで知り合った男だ。それは、こんな様子だった。
「はーい、ではまず俺たちから自己紹介しまーす! 俺は
では次、
「はい、僕は
「最後は僕ですね。名前は
男性の自己紹介が終わると、友太がうながした。
「次は女性の自己紹介、お願いしまーす」
男性三人、女性三人がテーブルをはさんで、向かい合って座っていた。
「はい、私は
「いいって、いいってこれくらい。直己から聞いたんだけど何でも佐野ちゃん、先輩に合コンをセッティングしてくれって頼まれたんだって?」
「はい、それがこちらの……」と佐野が答えようとした時、声色を作った里美がさえぎった。
「はぁーい、えっとぉ、私は
えー、やだあ佐野ちゃん。私、合コンのセッティングなんて頼んだっけ?
佐野ちゃんの方が、合コンの人数が足りないから出てくれって言ったんじゃなかったっけ?
まあ、そんなのはどっちでもいいじゃない。あ、それじゃあ、よろしくお願いしますぅ」
佐野は、それは無いでしょうと思い抗議した。
「ちょっと、ひどいじゃないですか、椎名さん。私は椎名さんに合コンをセッティングしてくれって頼まれたから、直己に相談したんじゃないですか。
それに椎名さん、いつもとしゃべり方が違いますよ?」
里美は、そう言う隣に座っている佐野の背中を、少し強めにたたいて答えた。
「えー、やだあ、佐野ちゃん。私、いつもと変わらないわよぅ」
そして佐野に顔を近づけて低い小声で、威圧した。
「余計なこと言うなよ、佐野。私は、この合コンにかけているんだからね!」
「それでは最後は私ですね。私は
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